「正しい指導であれば、息子がなくなることはなかった」
鹿児島市の中学3年だったサトルさん(仮名、当時15)は、2018年9月の始業式の日、自宅で亡くなった。自殺だった。
この日は始業式で、宿題の提出を忘れたことで、40代の担任教諭から他の生徒とともに集団指導を受けた。その後、個別指導を受け、自宅に宿題を取りに行かせた。その矢先の出来事だった。こうした生徒指導を契機に児童生徒が自殺することは、時に「指導死」と呼ばれる。
自宅2階部屋のドアを開けるとぐったりしている息子が…
サトルさんが亡くなった日、17時30分ごろに担任教諭からサトルさんの母親・アカネさん(仮名、40代)に電話が入った。
「今日、宿題の確認をしたが、提出してない。家で宿題をしていますか? サトルさんが宿題をしてないので残しました。教室にカバンはあるのですが、いなくなりました。どこか、サトルさんが行きそうなところに心当たりはありませんか?」
アカネさんは担任の口調を「すごく怖い」と感じた。17時40分ごろ、アカネさんは自宅に電話をしたが、サトルさんの在宅を確認できていない。18時前後、担任はアカネさん宅へ向かった。アカネさんも帰宅。サトルさんに電話をしたが、出ることはなかった。通常、サトルさんは1階のリビングで勉強したりして、過ごすことが多い。1階にはいなかったが、玄関には靴があった。そのため、2階を探した。
「宿題を提出していないから、塞ぎ込んでいるか、部屋に立てこもっているのかな?」
アカネさんはそう思っていた。2階には3つの部屋がある。一番手前の部屋のドアから、ヒモが見えた。開けると、ぐったりしているサトルさんがいた。近くには、スマホが置かれていた。後でわかるが、検索履歴を見ると、自殺の方法を調べていたことがわかった。
「叱責だけで自殺するだろうか?」と思ったのはアカネさん自身だ。筆者も、サトルさんの生前の写真をみても想像がつかない。バスケットボール部の部員で、背が高い。釣りや自然が好きで活発な面がある。のちに作成された「調査報告書」でも、「野生児のよう」というほど、活動的な面がある。自殺を含む死に関する話題をしていた様子もない。ただ、不安な要素としてあがっていたのは担任のことだ。