サトルさんへの指導になったのは13時30分ごろ。14時15分からは職員会議だった。担任が「いったいどのような夏休みを過ごしたのね?」と鹿児島弁で聞くと、サトルさんは「勉強をあまりしませんでした」と返事をした。周囲の証言では、指導後5分ほどしてから、怒鳴り声が聞こえたという。
担任の怒鳴り声については、調査委が入手した音声データがある。この指導場面ではないが、怒鳴り声はわかるものの、何を話しているかは聞き取れない。報告書では「地声が大きかったことから、扉が開いた際に、これらの声が3年職員室外に聞こえた可能性がある』とも書かれている。暴言については、複数の保護者が問題視しており、改善を求めていたとの報道もあった。
調査委は自殺の要因になった要素を検討しているが、性格などの個人的な因子、家庭要因、宿題未提出そのもの、進学への不安について検討をしているが、自殺の直接原因とは認めていない。
担任の指導が「自死に影響を与えた可能性は否定できない」
一方、担任の指導について、「普通の生徒であっても萎縮するほどの声量であり、怒られることに慣れていないサトルさんにとっては(中略)大きく動揺する出来事であった」「大声で責めるのみで、改善策を考えさせようとした様子は見受けられない」などとして、「自死に影響を与えた可能性は否定できない」と、因果関係を示唆した。
この日は始業式の当日。宿題や進路の不安を抱えて登校している。そのなかで指導中、サトルさんは涙を流した。そのことが羞恥心を高めた。「宿題を当日中に提出できないと再度厳しい叱責を伴う指導が予測され、サトルさんはそのようなストレスも感じていた」とも分析した。
その上で、(1)大声などで生徒に恐怖感情を与え、教師の意に沿う行動をさせる指導、(2)宿題を自宅にとりに帰らせる指導、(3)スタンプラリー(指導を受ける際、1人の教師からの指導が終わるとサインをもらい、さらに別の教師からの指導を次々と受けていくというもの)、(4)連帯責任(自殺前年、バスケットボール部に問題が起きた。サトルさんは関与していないが、連帯責任として清掃作業を強いられたことがあり、調査委は不適切とした)――は改善すべきとしている。
「報告書を読んでいると、サトルの頭の中が真っ白になっているのではと感じます。ただ、書かれていない箇所もあります。例えば、合唱コンクールがあったのですが、優勝しないと許されず、サトルのクラスだけが朝練をしていました。それでクラスの統制をとっていました」(アカネさん)