「なぜ嘘をついたのか?」などの説明は一切なされなかった
サッカー部の顧問だった教員は「わたしから3つあります。まず1つ。頭を叩いたり、耳を引っ張ったりしたこと、本当に申し訳なかった。また、もう1つは、もうちょっと本人から事情を聞いた上でいろんなところで説明をすればよかった。それもしないで勝手に説明をしてしまったこと、本当に申し訳なかった。最後に、中学校3年間、サッカーが好きで入部をしてきたのに、サッカーをさせてあげられなくて、本当に申し訳なかった」と詫びた。
健太さんはこの日までに聞きたいことをまとめ、メモにしていた。それを読み上げる形で質問をした。
「校長や市教委は、なんで文科省や埼玉県教委に、『僕と話していない』とか『僕に会えていない』とか、うそばかり報告をしていたんですか?」
「松崎校長や顧問の先生は、なんで保護者会で、僕が何をされたとか本当のことを言わなかったんですか? 僕は、みんなから、“いじめられたって嘘をついて休んでいる”とか言われました。だから、僕はともだちがみんないなくなりました」
「僕の記録も嘘ばかりですけど、いつになったらちゃんと直してくれるんですか?」
これらの質問について、訪問した7人からは具体的な返答はなく、「なぜ嘘をついたのか?」などの説明は一切なされなかった。そのため、健太さんは、7人が帰宅したあと、筆者の取材に「謝罪があったので、一応の区切りはついた」と言いながらも、理由についての説明がなかったことに「どうして言ってくれないのだろう」と疲れた様子で話していた。その後、自室のベッドに横たわっていた。
僕が失くしたものすべてを返してほしい
ちなみに、健太さんが用意したメモの中には、読み上げた質問以外にも、「ぼくはいじめられたことより、教育委員会や校長、顧問の先生に嘘ばかりつかれたことのほうがすごくくやしいし、辛いし、くるしいです」と書かれていた。さらには、謝罪の前にメディア向けのコメントも用意していた。そこには「学校や教育委員会に嘘ばかりつかれて、僕は楽しく過ごせるはずだった時間や友達、沢山失くしました。今でもくやしさや辛さ苦しさは消えなくて、毎日薬を飲まないと過ごせません。僕が失くしたものすべてを返してほしいです」とあった。
また、やりとりの中で、健太さんがサッカー部の顧問に手紙を出していじめのことを相談していた件について、「記憶にない」と顧問が発言したが、関係者が帰宅後、「助けてくれると思って相談したのに覚えていない」とがっかりして、涙を流した。