「学校側が調査していたのは、裁判対策だったのではないか」
「いじめ発覚後、学校側が調査していたのは、被害者に寄り添ったものではなく、裁判対策だったのではないか。虚偽のことを主張するにしても、本当のことを知らないといけませんし。これまで市教委は、市教委作成資料と担任作成資料に基づいて、いじめがあったかどうかわからないと主張してきました。新たに設置された調査委に資料を提出する過程で、隠していたはずの『学校側作成資料』を間違って出してしまったのではないかと思います」(同前)
ちなみに、父親が情報開示請求をして開示させた「生徒指導に関する状況報告」(2月分)がある。その中の、「問題行動」欄に「恐喝」とある。その部分に性別としての「男」の欄に「7(人)」とあり、「件数」として「1(件)」とある。さらに「いじめ」の部分には、「男」の部分で「9(人)」、「女」の部分で「4(人)」とあり、「件数」として「1(件)」と書かれている。
「状況報告」には、「補足説明」が添えられている。これは、裁判所が市教委への調査嘱託で出させたものだ。「補足説明」には、被害のあった男子児童から聞き取りをしている記録が残されている。1学期の中頃からクラスの友達から、落書き、悪口、学用品を隠されるなどのいじめがあったこと、この段階で加害側の児童には20万円以上が渡っていることが記されている。ちなみに、こうした資料の存在について、裁判中、市議会には知らされていない。
「市教委は嘘ばかりつくし、ごまかしたり、問題から逃げている」
「『補足説明』は開示請求で非開示になっていましたが、加害者との訴訟で裁判所が調査嘱託で出させたものです。市教委の説明では、“これは校長が調査したものではなく、被害者の訴えを記録したもの”としてきました。そのため、この『報告書の作成マニュアル』も開示請求しました。そこには『学校が調査した事実のみ』とあります。被害者の訴えのみを記載してはいけないとあるので、調査結果のはず。それでも、市教委は内容を否定してきたのです」(同前)
なお、神戸市議会への陳情は、学校事件事故被害者遺族の会の代表、西尾裕美さんが行った。2002年3月22日夜、西尾さんの長男は自宅で自殺した。その日、生活指導があり、呼び出しを受けた西尾さんの目の前で、長男は校長や学年主任から厳しい叱責をされた。西尾さんが涙するほどだった。その夜の出来事だった。こうした経験から、陳情を繰り返してきた。西尾さんは筆者の取材にこう答えた。
「陳情を出してから文教こども委員会を傍聴し続けてきたが、市教委は嘘ばかりつくし、ごまかしたり、問題から逃げていると思いました。この問題をなんとかしないと、全国のいじめ問題も解決しない。調査委には期待しています」
神戸市教育委員会児童生徒課は、筆者の電話取材に対して、「市教委は当時、事案としては把握していました。当時のいじめの定義に基づくいじめの有無について、また、当時の市教委の判断の適否について、調査の対象になっています。調査委には我々が所有しているすべての資料を渡しています。学校作成の資料が当時、出ていなかったどうかは現段階で市教委として承知はしていません。そのため、隠す意図があったかのかどうかは答えられません」としている。