2021年5月11日、新宿・歌舞伎町のアパホテルの上層階から、10代の男女2人が飛び降りて死亡した。コロナ禍で10代の自殺が増加していることが注目されていた時期でもあった。

 ニュースを知ったとき、まず「なぜ、歌舞伎町のホテルで?」と筆者は感じた。また、この時期、歌舞伎町の映画館「TOHOシネマズ」の横にある路地に、10代の子どもたちが集まっていることが気になっていた。すでにその路地は「トー横」と呼ばれており、普段の歌舞伎町とは違った雰囲気があった。そして、自殺した2人がトー横に集まっていたこともわかり、「生きづらさ」を感じる若者たちを継続的に取材してきた私は、彼らの存在が気になり始めていた。

TOHOシネマズ新宿の付近に集まる、トー横キッズたち

東宝ビル周辺に集まる「トー横キッズ」たち

 靖国通りから南北の通り「セントラルロード」を通って歌舞伎町の中心街へ行くと、「TOHOシネマズ」のある新宿東宝ビルが見える。そのビルの8階部分にあるゴジラ頭部のオブジェは2015年に作られた。翌16年には「シン・ゴジラ」(総監督・庵野秀明)が公開。「セントラルロード」は「シン・ゴジラ」の身長と同じ118・5メートルで、「ゴジラロード」とも呼ばれている。東宝ビルを「ゴジラビル」と呼ぶ若者もいる。

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「ゴジラロード」とも呼ばれている歌舞伎町の「セントラルロード」

 東宝ビルの東側の路地に若者が多く集まるようになり、「東宝ビル」の横にある路地という意味で「トー横」と呼ばれるようになった。現在は反対側にある「シネシティ広場」(広場)を「トー横」と呼んでいる人もおり、「東宝ビル」周辺一帯が「トー横」と拡大解釈されているようだ。

 トー横に集まる若者たちを取材すると、多くはSNSを通じて集まってきていた。ここに集まる若者たちを「トー横キッズ」と呼ぶ人も出てきたが、当人たちが自称しているわけではない。「トー横キッズ」というと、10代のことかと思いきや、集まっている年代層は幅広い。