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「怖い話」が読みたい

眠っていた男性に「触りましたよね」 電車内で目撃した“偽装痴漢”の一部始終

2022/01/03

genre : ニュース, 社会

 先日、始発電車で移動中に怖いものを見た。

 土曜日の早朝ということもあってか、乗客は飲み会帰りと思しき人々がほとんどで、車内にはムンとした酒の臭いが充満していた。緊急事態宣言が明けた喜びでタガが外れるほど飲んだのか、座席を3、4人分占領して靴のまま横になっている若者、それを睨んでいる初老の男性、かなり酔っているのか、足を大きく開いて前のめりの姿勢で眠り、ボサボサになったロングヘアで顔がすべて隠れてしまっている若い女性など、様々な酔い方をしている人で車内はあふれていた。しばらく歩いていると、比較的空いている車両にたどり着いたので、端から2番目の席に腰を下ろした。

©iStock.com

足を伸ばして豪快に眠る女性

 左隣には眠っている女性、右隣にはひとつ空席がある席を選んだが、発車間際に乗り込んできたサラリーマン風の男性がその席に座り、時折こくりこくりと首を揺らしはじめた。たまに私の肩に頭が当たることもあったが、本人が「すみません」と謝り、なんとかそれを抑えようと眠気と戦っているのがわかったので、それ以降は特に気にしないようにした。

 斜向かいの座席で眠っている、足を伸ばしきって通路に放り出し、かろうじて上半身だけを座席に乗せた状態で腕を組み、いびきをかくスポーティーな格好の若い女性が目についた。とっさに「直線」と思った。頭から足までがほぼ直線になっていて、床から約45度の角度を保っていた。彼女の両隣には誰も座っておらず、左側の空席には、彼女のものと思われるバッグが置かれている。

 あの体勢はつらくないだろうか、と思いながら電車に揺られていると、2駅ほど先で、これまたお酒を限界まで飲んだのであろう40歳前後の男性が乗り込んできて、直線の女性の右隣にどっかりと座り、すぐにぐうぐうといびきをかき始めた。私は電車で寝ることができない体質なので、眠気はあったが時間を持て余してしまい、音楽を聴きながら窓の外の景色を眺めたり、ぼうっとしたりして目的地までの長い時間を過ごそうとしていた。

女性がポケットからスマートフォンを取り出し……

 事態が変わったのは、さっきの泥酔した男性が乗り込んできた数分後だっただろうか。コクリコクリと首を大きくグラグラさせる男性に気付き、直線の女性が目を覚ました。女性は男性をまじまじと見ながら、座席に大きく沈み込んでいた体を起こして体勢を整えたので、もう直線ではなくなった。

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