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「市教委が、学校作成の資料を隠蔽したと思っています」

 男子児童は、加害者3人とその保護者を相手に提訴した。その過程での神戸地裁の学校への調査依頼(調査嘱託)で、市教委は、いじめを事実上否定する回答をした。また、恐喝に関する部分でも、男子児童側に「お金やろうか」などの発言があったことを理由に、恐喝との認識を否定した。さらなる調査については、被害児童から転校などで事情を聞くことが困難になった、としていた。

 神戸地裁の判決は、「原告(男子児童)が被告児童(加害児童)らに金銭を交付した行為は、任意で行なったものではなく、被告児童らの要求に対して困惑ないし畏怖した」として、「たかり行為」であると認定した。また、日常的に暴力行為が行われていたことも認定された。大阪高裁でも、神戸地裁の判決を概ね認めた内容で、判決が確定している。しかし、これまで市教委としてはいじめを認めてはいない。

 資料を入手したのは、2002~2003年度に神戸市の教育長を務めた西川和機氏。これまでの市議会の議事録を読んでいた。また、15年前のいじめ事件の調査が始まったことを伝える新聞記事を読んで、辻褄があわないと感じていた。西川氏はこう指摘する。

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破られた教科書 ©渋井哲也

「もともとは、(聞き取り調査メモを隠蔽した)垂水区の女子中学生の自殺事件のニュースの関連で、このいじめ問題も取り上げていました。記者の質問に対する、教育長の、『子どもたちがはっきり言うていない部分もあるだろうし』などの回答がおかしいなと思ったんです。市議会の議事録や、調査委員会の設置が決まったときの新聞記事も読みました。どうもおかしいと思ったので、独自に調べました。僕は、市教委が、学校作成の資料を隠蔽したと思っています。隠蔽しただけでなく、裁判所の調査嘱託への回答を偽造したことにもなるのではないか」

友人に渡した金額を過小評価

 西川氏は、独自のルートで資料を入手した。その中には、市教委作成の「時系列」と学校作成資料(日誌記録)、担任作成資料(学級指導記録)がある。なかでも、「学校作成資料」は、調査委設置後に初めて、外部に出てきたものと見られている。しかも、市教委作成の「時系列」は、「学校作成資料」の要点とは言えない、としている。つまり、市教委が独自に調査を行い、事実を隠していると思われる内容になっているというのだ。

 その学校作成資料には、発覚日の記述として、担任教諭宅に母親が電話をした時間が書かれている。そして内容としても、「子ども(□□□□さん)が家のお金を合計で10万円以上持ち出し、友達に渡している」というものだった。一方、市教委作成の「時経列」では、時間が明示されていない。発覚日の記述では、「□□がゲーム機の購入を依頼するため□□、□□に15,000円渡すところを□□の父親が見つける。これまでの金銭のやりとりが発覚し、学校に連絡が入る」などと、過小評価するかのような内容に変化している。