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「プロ野球選手やべえな」楽天・藤平尚真が横浜高校で学んだことと松坂大輔の真っ赤なフェラーリ

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/08/09

心境に変化が生まれた“平成の怪物”のエピソード

 忘れられない思い出の一つが、部員たちの中でOBで「レジェンド」と称される松坂さんとの出会い。プロへの意欲を沸き立たせてくれる貴重な経験もあった。

「1年生の時に松坂さんがシーズンオフでグラウンドに来られたことがあって、真っ赤なフェラーリに乗っていたんです。周りもみんな『プロ野球選手やべえな』って話で持ちきりなった。そこで僕もプロ野球選手になって、あんなかっこいい車に乗りたいなと。本気でプロ野球選手を目指そうと思った瞬間でした」

 この時を境に「プロに行った先輩方がどんな選手だったか知りたい」と、渡辺監督の元に行っては松坂さんの高校時代のことを聞くようになった。

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「渡辺監督は、『松坂は本当にすごかった』と言ってました。入学してきた時は太っていて、小倉コーチが無理やり走らせていたみたいで(笑)。でも、松坂さんは背中で引っ張っていたと。あまり発言するタイプじゃなくて、背中で示すタイプで『試合で結果を出す執念が高校生離れしていた』と。例えば練習試合でも絶対に負けない。『負けたら終わり』と思って投げていたそうです」

“平成の怪物”のエピソードに触発されて、心境に変化が生まれた。

「僕は練習試合で自分たちよりも力の劣るチームとやる時は変化球を多めに投げたり、どこかで手を抜いたりすることもあったんです。でも松坂さんの話を聞いてからは、『絶対にゼロで抑えないといけない』と思って試合に臨むようになりました。最後の夏もそうやって臨んだことで甲子園に行けたんだと思います」。かつての大エースがつけてきたエースナンバーを背負い、臨んだ16年夏の神奈川を制し、甲子園出場を果たした。

 同年のドラフト会議で1位指名を受けて楽天に入団。6年目を迎える右腕は「野球をやっている以上は横浜高校で教わったことが基準としてある。これからも教わったことは忘れないようにしていきたい」と力を込めた。渡辺監督からは「心」を、小倉コーチには「技と体」を鍛えられた薫陶の日々は確かな血肉となった。

 2人の恩師も教え子がもう一皮も、二皮もむけることを願っているだろう。羽ばたけ、藤平。

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