文春オンライン

2022/08/11

中年の危機! 失速した40代

 まず2001年、トムの不倫が原因でニコール・キッドマンと離婚。またトムは新興宗教サイエントロジーにハマっていた。サイエントロジーは邪悪な銀河連邦といった単語が飛び出すSF的な教えを説く団体で、トムはその思想に従って「精神医学はニセ科学」といったどう考えてもアウトな失言をかましてしまう。

 さらに2005年にテレビのトークショーに出演した際にテンションが上がりすぎて、ソファーの上で飛び跳ねるなどの奇行を見せる。世間のイメージは急激に悪化し、映画会社ともトラブルが起きた。『ミッション:インポッシブル3』(2006年)はシリーズの中では大ヒットとは言えない結果で、ロバート・レッドフォードが監督・主演したポリティカルサスペンス『大いなる陰謀』(2007年)もイマイチに終わった。

 もちろん渡辺謙や真田広之ら演じるSAMURAIと共に明治政府と戦う『ラストサムライ』(2003年)や、宇宙人の襲撃からひたすら逃げまわるパニック映画の傑作『宇宙戦争』(2005年)といった話題作もあったが、ゴシップが先行し、20~30代の頃に比べると失速したのは否めない。

 俗に「中年の危機」という言葉があるが、40代のトムも危機的な状況にあったと言っていいだろう。ところが、こうした危機をトムは1本の映画で乗り切った。

 ゼロ年代後半、トムは『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』(2008年)というコメディに出演する。戦争映画を作っていたスタッフが、色々あった末に本当の戦場でロケをすることになる偏差値が地表スレスレのコメディ映画の傑作だ。強烈なシーンが連発するが、その中でも観客は、トムのパフォーマンスに驚愕した。

 トムは特殊メイクで太ったハゲ頭の短気で強欲な映画プロデューサーに変身して、それまでのイメージと全く異なるキャラクターを熱演したのだ。

写真右が特殊メイク姿のトム・クルーズ ©getty

 何かにつけて激怒しては放送禁止用語を連呼しまくり。最後はダンスナンバーをBGMに1人で踊り狂う。無茶苦茶な役で新境地を開拓しつつ、同時にパンツ姿で踊っていた『卒業白書』の頃の初心を取り戻す離れ業を披露したのだ。

 たけし軍団もビックリの“みそぎ”的な怪演は高く評価され、ゴールデングローブ賞助演男優賞にノミネート。さらにこの扮装のままMTVムービー・アワードのステージでジェニファー・ロペスと一緒に踊る大フィーバーを巻き起こす。

 そして、この頃から何となく「トム・クルーズは色んな意味でヤベぇ」という世論が形成されていった。いち俳優やいちプロデューサーを超えて、ある種の怪人的な魅力を放ち始めたのだ。

(本記事の初出は「tayorini」by LIFULL介護より)

 

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