主演作『トップガン マーヴェリック』の興行収入は100億円を突破! 60歳にしてキャリアハイを更新したトム・クルーズだが、そんな世界的スターも過去には奇行や悪評ばかりが目立つ時期があった。

 トムが失速した40代の頃のエピソードを、ライター・加藤よしき氏の新刊『読むと元気が出るスターの名言 ハリウッドスーパースター列伝』より一部抜粋してお届けする。彼が再浮上できた、意外すぎる理由とは?(全2回の1回目/後編を読む)

©もりいくすお

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 トム・クルーズが大変だ。60歳にして、立て続けにアクション映画で主演しているのだが、明らかに若い頃より無茶な体の張り方をしている。普通は歳をとると体への負担を減らしていくものだが、彼は世間一般の真逆をいく。何しろ最新作『トップガン マーヴェリック』(2022年)では操縦こそしていないものの、本当に戦闘機に乗っている。つまり超高速でグルングルン曲芸飛行をする飛行機の中で演技をしているのだ。

 近年では、代表作『ミッション:インポッシブル』(1996年)で本当にビルからビルにジャンプして足を骨折したり、潜水シーンのために水中で6分も息を止める訓練(どんな訓練だ)をしたそうだが、それにしたって戦闘機に乗り込むのは別次元だ。肉体への負荷は大きいし、もしミスがあれば大事故になる。スタッフはもちろん、撮影に協力している米軍だって気が気でない。

 米軍を心配させる俳優なんて他にいないだろう。このスケールの大きさ、まさしくハリウッドスターの鑑である。

60歳にして、キャリアは最盛期(写真:Getty)

 彼の輝かしいキャリアを振り返りながら、彼がどんなふうにキャリアを重ねて来たのか、何故に60歳手前にして戦闘機に乗り込むことになったのか、そしてどこへ向かっているのかを考察していきたい。

青春漫画よりスゴイ! 展開が早すぎる10代

 トム・クルーズ、本名はトーマス・クルーズ・メイポーザー4世。

 高校時代はレスリングに熱中し、選手としてかなりイイ線にいったというが、アキレス腱断裂で選手生命を絶たれる。幼少期に受けたイジメ、両親の離婚、選手生命の危機と、10代にしてかなりの激動の人生を送っているが、ここから彼の人生はさらに加速する。

 レスリングから身を引いたトムは高校演劇の世界に身を投じるが、彼の舞台の観客の中に偶然にも芸能エージェントがいた。エージェントはトムの楽屋に突撃すると彼の才能を絶賛し、一緒に仕事をしないかと熱弁。この気合に胸を打たれたのか、トムは高校卒業後にプロの俳優を目指してニューヨークへ向かい、無数のオーディションを受ける。まるで青春漫画のような展開だが、トムの人生は漫画より展開が早かった。