日本でも高い人気を誇るハリウッド俳優のブラッド・ピット。出る作品すべてが話題、大ヒットに見える彼だが、実は私生活は滅茶苦茶だった。
混迷の時代とも言える、彼が40代のときのエピソードを、ライター・加藤よしき氏の新刊『読むと元気が出るスターの名言 ハリウッドスーパースター列伝』より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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「映画の中身は知らないけれど、このシーンは知ってる」――どの世代にも、そんなアイコンがあるものだ。
たとえば『ティファニーで朝食を』(1961年)を見ていなくても、オードリー・ヘップバーンのポスターを知っている人は多いだろうし、『ターミネーター2』(1991年)を見ていなくても、「親指を立てて溶鉱炉に沈んでいく」シーンを知っている人は多いだろう。
現在36歳の私にとって、その感覚をリアルタイムで体験したのがブラッド・ピットであり、『ファイト・クラブ』(1999年)だ。
『ファイト・クラブ』は、ブラピ演じる危険なカリスマ、タイラー・ダーデンがカルト組織“ファイト・クラブ”を立ち上げ、過激なテロへと突き進んでいくサイコサスペンスである。男社会の危険性、資本主義への批判、暴力、セックス……その難解かつ過激な内容に反して、今のアラサー/アラフォーの間での『ファイト・クラブ』の知名度はズバ抜けたものがある(まぁテレビ番組の『ガチンコ!』の影響もデカイわけですが)。
それこそ本作を見ていなくても、上半身裸でタバコをくわえたブラピを覚えている人は多いだろう。
本作のブラピは悪役だが、その見事に割れた腹筋と圧倒的なハンサム力は観客の心をわしづかみにした。日本でもブラピ人気は爆発し、某ジーンズのCMでは「ご~まるさん~エドウィ~ン」と高らかに歌い上げていた。
多くの男性がブラピを目指し、当時は思春期真っただ中だった私の周りにも、『ファイト・クラブ』のブラピを目指して筋トレに励む者は多かった。まさにカリスマ、世紀末のセックスシンボルである。あれから20年以上の時が流れたが、ブラピは今なおハリウッドの第一線で活躍中だ。
この章ではセクシー現人神が辿ったブレイクへの軌跡、その秘めた苦悩と葛藤の日々、そして現在に至るまでの経歴を総ざらいしつつ、理想の歳の取り方について考えていきたい。
圧倒的顔面パワーで突っ走った10~20代
ブラッド・ピット、1963年生まれの58歳。ブラピといえば、圧倒的なハンサム力(ぢから)である。彼の端整な顔立ちは、少年時代から既に完成されていた。周囲の人々は幼いブラピを見ては「古代ローマの彫像にそっくり」と評していたという(どんな子どもだ)。
周りから彫像扱いされる少年はいつしか野心を抱く。己のハンサム力がどこまで通じるか見てみたい……若きブラピはそんな野心を抱き、大学を卒業直前に親に「建築の勉強をするから」と大ウソをついて中退、俳優の世界へ足を踏み入れる(後にちゃんと「嘘です。俳優目指してます」と謝っています)。