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 さらに本作はブラピに素晴らしい出会いをもたらした。監督のフィンチャーはブラピと話が合ったのか、続けざまにブラピを主演に起用する。それこそが『ファイト・クラブ』だ。公開当時の評判は決して良くはなかったが、ここでブラピが歯を抜いて演じたタイラー・ダーデンはカルト的な人気を獲得し、世界中の男を筋トレに走らせた。

『ファイト・クラブ』公開初日のブラッド・ピット。右はかつての妻であるジェニファー・アニストン ©getty

 私生活では1998年にジェニファー・アニストンと結婚し、まさに公私ともに絶好調のまま2000年代を迎える。しかし……。

歪んだワーク・ライフ・バランス、混迷の40代

 ブラピはワイルドな性格だった。彼が俳優として成功を掴んだのも、そのワイルドさゆえである。己の顔面ひとつを武器に映画界に乗り込み、フィンチャーのようなエキセントリックな監督とも臆せず向き合った。

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 あの悪名高いワインスタイン事件でも、彼のワイルドさは良い方向に動いた。映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインが女優たちに性行為を強要していたのだが、当時のハリウッドで巨大な権力を持っていたワインスタインに逆らえる者はおらず、被害者は泣き寝入りするばかりだった。

 女優グウィネス・パルトローもその被害に遭ったというが、このとき彼女の恋人だったブラピはワインスタインの事務所に乗り込み、「次に彼女に不快な思いをさせたら殺す」と直でシメたという。こうしたワイルドな性格は彼の魅力だった。

 けれど、そうしたワイルドなスタイルと結婚生活の相性は最悪だった。

 当初こそブラピとジェニファー・アニストンは「ハリウッドきってのおしどり夫婦」と評判だったが、徐々にブラピが独身時代に語っていた「思い切り滅茶苦茶に野蛮になりたい」という願望が結婚生活を破綻させてゆく。