全国の道府県警察本部(以下、全国警察)の警護員たちを指揮する幹部は、1年間におよぶ警視庁警護課での研修を受けることを警察庁から強く促進されている。
しかし、今回の現場にいた警護員たちには“ある問題”があった。
警察庁は、全国警察に対し、その研修を受けるため警護担当の幹部こそ積極的に「入校」するよう強く奨励している。しかし、今回の現場では、ある重要な警護員が「入校」していなかったのである。
また、東京から安倍氏に同行してきた警視庁SPにも、警護員OBは疑問を投げかけている。奈良県警の警護員たちの力量を分かっていながら、経験を積んだSPはなぜ指導をできなかったのか──。
「マニュアル」では「選挙警護」という専門項目を作っている。そこでは、地元の選挙支援組織との対処について、事細かく「教養」(きょうよう)していた。だが、安倍氏の警護の現場では、それが遵守されなかった可能性が高い。
「LO」(ローン・オフェンダー)の極秘データベース
しかしその一方で、道府県警察の警護員たちには不幸な「ある事情」があったことも、「現役の警護員」たちは苦渋の表情を浮かべながら語ったという。
これらの事実により、警護員たちの教養に腐心してきた警察庁を大きな衝撃が襲った。
だがその一方で、犯人の人定ができた瞬間、警察庁のある部署で係官たちは、急いで立ち上げたコンピュータにかじりついた。係官が見つめたものは「LO」(ローン・オフェンダー)と密かに称された極秘のデータベースだった──。
そこでは、対象者を危険レベルが高い順に、A、B、Cとランク付けするだけでなく、それぞれに対する対処方法を詳細に指示しているのである──。
では、山上容疑者は「LO」データベースに登録されていたのか?
その詳細は「文藝春秋」9月号掲載の麻生幾氏のレポート「SPはなぜ山上を撃たなかったか」をご覧ください。