安倍晋三元首相の銃撃による死亡のニュースは韓国でも大きな衝撃を持って報じられ、連日、続報も大きく扱われている。

 韓国に安倍晋三元首相の銃撃事件の第一報が入ったのは、事件から間もない7月8日午前11時40分過ぎだったと中道系紙記者が言う。

「社のニュース掲示板をチェックしたら、『NHK一報 安倍遊説中倒れる』という速報が飛び込んできてびっくりしました。続々と二報、三報が入りましたが、治安のいい日本で銃撃が起きたことが信じられなくて、東京特派員に確認してようやく事態を呑み込みました」

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どの新聞も3~4ページにわたり報道

 8日午後にはテレビでも関連ニュースが続々と流れ始め、死亡が確認された夜のニュースではどの時間帯の報道番組もトップで報じていた。いずれのテレビ局も「右派の象徴」や「保守の象徴」といった言葉で安倍元首相を形容し、これまでの軌跡や参議院選の行方について触れていた。

©時事通信社

 翌9日朝の新聞の一面も保守・進歩系問わず、ほぼ同じような見出しが並んだ。

「日本の保守の心臓、安倍(元首相)、撃たれて死亡」(朝鮮日報)

「日本右派の象徴、安倍、遊説中に撃たれて死亡」(東亜日報)

「右派安倍、前職自衛隊員の銃弾により死亡……日本激浪へ」(韓国日報)

「安倍元首相、遊説中銃撃死亡」(京郷新聞)

「安倍、銃撃により死亡」(ハンギョレ新聞)

 どの新聞もテロ行為はどんな理由にせよ許されないという論調は一貫しており、いずれも3~4ページに渡って大々的に報じていた。安倍元首相の来歴について年表なども使って詳しく触れ、事件についても写真や大がかりな図解をつけて解説し、犯人の素性や手製の銃についても詳細に報じた。

日本との関係改善の行方を憂慮する論調も目立つように

 韓国では安倍元首相には批判的な見方が強く、進歩系紙は「植民地支配についてこれ以上の謝罪と反省はできないとする歴史修正主義者だった」(ハンギョレ新聞、7月9日)とも書いたが、来歴では概ね、日本政治史上初の戦後生まれの首相であり憲政史上最長の在職期間を誇ったこと、祖父、父親に次ぐ政治家3代の家柄であることなどに淡々と触れられており、安倍元首相の政策の目玉として「3本の矢」を謳った「アベノミクス」を挙げていた。

 また、保守・進歩系問わず、日本社会の右傾化を推し進めた人物と評し、退任後も自民党の最大派閥のトップとして強大な影響力を持っていたことを指摘。保守系紙「朝鮮日報」は、「退任後も令和の“闇将軍”や“自民党のキングメーカー”などと呼ばれ強大な影響力を行使した」と書いている。

 そんな安倍元首相が銃撃に倒れたことにより、日本の保守層が結集し、日本社会がさらに右傾化するのではないかと報じたメディアも多かった。そのため、5月に交代した韓国の新政権が乗り出していた日本との関係改善の行方を憂慮する論調も目立った。