2022年上半期(1月~6月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。ライフ部門の第2位は、こちら!(初公開日 2022年3月11日)。

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 2021年11月、数々の作品を世に送り出した作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんが、心不全により亡くなった。99歳だった。秘書として11年間をともに過ごした瀬尾まなほさんは、しばらくその事実が受け止められず苦しんだという。

 寂聴さんの誰よりも身近にいた瀬尾さんが、その最期の日々を綴った『#寂聴さん 秘書がつぶやく2人のヒミツ』より、寂聴さんの考える意外な「イイ男」像について紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)

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瀬戸内寂聴さんと瀬尾まなほさん 『#寂聴さん』より

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 先生は「イイ男」が好きだった。でもその男の人も、私が思う「イイ男」じゃない。私が思う「イイ男」の条件は、嘘をつかない、優しい、誠実、仕事をちゃんとしている、浮気しない、家族を大切にする、育児家事をする、ユーモアがある、紳士。

 先生にこれらの条件を話したら、「つまらない」と言われていたかも! 先生は自分でも認める、「ダメ男」好き。不良だったり、お金にルーズだったり、仕事をちゃんとしない、女遊びをする、嘘をつく……など、これだけでも最低野郎に思えるけれど、先生はこれにプラス刑務所に入っていたような人が面白いとも言う。

 自分がいなくても大丈夫、と思える人はそもそも好きではないし、そんな自立している男性は先生のそばに、そもそもいない。

 確かに、私も経験上、一緒にいて楽しかった人や刺激的な人は、どこか難ありだった気もする。自由奔放で、自信があって、輝いていたようにも思う。その人といて安らぐとか、安心できるとかいうことはなかったけれど、ドキドキワクワクした気もする。

 不安になったり、悲しい思いをすることも、そのときはスパイスとなり、刺激的でもあったのだろうが、それはやっぱり続かない……。安心したい、信じたい、幸せになりたい、そんな気持ちのほうが強くなってきて、その人から去るほかに自分が幸せになる方法はないように思えた。

 安定など求めていない、いつもドキドキワクワクしていたい。そんな先生は、本人曰いわく「どうしようもない人」がいいみたいだった。先生はほっとけない、ちょっとやんちゃな雰囲気が漂う人に魅力を感じていたのだろう。