印中パのつばぜりあいと日本
中国とパキスタンががっちりと手を結び、インドに相対するという構図は、「三国志」で呉と蜀が組んで魏に対抗しようとした歴史を彷彿とさせる。「赤壁の戦い」のように武力衝突が起きるわけではないが、2018年は外交や経済の舞台で三国の激しいつばぜりあいが展開されることになるだろう。
三国の首脳が一堂に会する場として、上海協力機構(SCO)がある(中国は創設メンバー、印パは2017年に加盟手続き完了)。2018年は中国が議長国であり、夏頃に年次首脳会議が開かれる見通しだ。パキスタン総選挙後の開催であれば同国から新政権の首相、インドのモディ首相、中国の習主席が相まみえる。南アジアだけではなく、ロシアや中央アジアをも巻き込んだ、ユーラシアの広域安全保障の秩序づくりをめぐる各国の思惑がぶつかりあうことになりそうだ。
二国間関係では、インドとパキスタンに注目したい。2016年にパキスタンに拠点を置く過激派組織によるものと見られるテロがインドで起きたことで、両国関係は冷え込んだ状態がつづいている。しかし、仮にパキスタンでイムラン・カーン氏が首相になれば、仕切り直しの機運が生じよう。実際、同氏は2015年12月にインドを訪問した際、モディ首相とも会談し、印パの関係緊密化で一致している。
ただ、これまでも一進一退が繰り返されてきた両国関係だけに、関係改善といってもそう簡単な話ではない。パキスタンの場合、隠然たる影響力を持つ軍部の支持を取りつける必要があるし、インドも次期総選挙を見据え、弱腰な姿勢は見せにくいからだ。
南アジア情勢は日本にとっても無縁ではない。インドとの間で戦略的連携を深める一方、安倍晋三首相のイニシアチブで、これまで慎重だった「一帯一路」に前向きな姿勢を示すことで対中関係改善に乗り出すなど、「自由で開かれたインド太平洋戦略」のもと、日本外交も活発に動き始めている。河野太郎外相が2018年1月に予定している南アジア歴訪も、同地域で日本がより積極的な役割を果たそうとする意思表明だ。「南アジア三国志」のダイナミズムにどう対処するか、いまほど問われている時はないのである。