〈我々老人世代は環境危機に責任がある。同時に我々は質素だった昔を経験して来た世代でもある〉
〈「貧幸」という素敵な言葉がある。貧しいが倖せ。そういう意味の言葉である。僕は貧幸の時代を知る、今の世に遅れた人間である。だが今僕はあの貧幸の時代に、出来得るならば戻りたいと思っている〉
『北の国から』『やすらぎの郷』の脚本家として知られる倉本聰さん(87)。「文藝春秋」6月号の寄稿「老人よ、電気を消して『貧幸』に戻ろう!」は、新聞に取り上げられるなど大きな反響を呼びました。
「文藝春秋」編集部が読者から「貧幸時代」の実践例とアイディアを募集したところ、国内外から275通の投稿が寄せられました。
例えば、猛暑が続く今日この頃、どうすればクーラーに頼りすぎない省エネ生活を送ることができるのか。茨城県結城市の幼稚園園長は、園内にある“天然クーラー”を紹介してくれました。
〈園庭は、春から初夏にかけてエノキが繁茂する。その木陰は園庭全体を覆う。風通しも良い。天然のクーラーのよう。エノキの木陰で園児たちは遊び、食し、学ぶ〉
倉本さんは、『北の国から』の舞台でも知られる、自然豊かな北海道・富良野在住。自宅の周りにはコブシ、アカエゾ、アカシアなどの木々が繁茂し屋根を覆っているそうです。幼稚園園長の投稿を受けこう綴っています。
〈夏はやっぱり暑いです。
こゝは夏場は35、36度まで平気で上る土地ですから。でも木々のおかげで家の中はかなりしのぎ易く、暑いのは大体10日間位で8月の末には又ストーブです。ですから我が家にはクーラーはなく、40数年ずっと来ましたが、さすがにこのところの温暖化による暑さには、87歳という年齢もあって周囲の者たちから心配され、冷暖兼用の器具をつけました。でも今のところ(7月中旬)まだ一度も使っておりません。
都会の猛暑には同情しますが、残念乍ら僕にはそれについて意見を述べる資格がありません〉
倉本さんが、読者の皆様からのアイディアに触れ思い浮かべたのが「創」という言葉だと言います。