“透明人間”からの脱却 勝ちパターン定着で一気に突き抜けた
6年目の今季。キャンプから地道に結果を積み重ねて、キャリア2度目の開幕一軍をつかんだ浜地は“初陣”にかけていた。
「開幕して最初の試合がすごく大事だと思っていた。何とかインパクトを残したいというのはあったので」
開幕ロースターに入った一軍の中継ぎ投手の中で立場は“最後尾”で結果が出なければ降格という現実が待っていた。3月27日のヤクルトとの開幕シリーズ3戦目。他のリリーフメンバーが次々に初登板を果たす中、大トリで登場すると渾身のストレートを投げ込んだ。8球中、5球が150キロを超え、最速152キロを記録。ホールドも付かない状況だったが、奪った3つのアウトには大きな価値があった。
そこから地道に好投を続けると起用される状況や登板間隔は変わっていった。7月下旬からは勝ちパターンの「7回の男」として登板が増加。前半戦を終えて防御率は1点台、登板数もキャリア最多の30試合と一気に突き抜けた。
1年前とは立場も見える景色も一変。“着席”したまま拳を握り続けていたのは1年前だ。4試合登板に終わった1年は、屈辱を噛みしめる日々だった。
「一軍に1週間いてもボールに触る機会すら一度もなかったり……。ブルペンで座ったままで、準備したりすることも全くないまま終わったり……情けなかったし、本当に悔しかったですね」
昇格を果たしても“透明人間”のように存在感を示せないままファームへの降格を告げられた。そんな過去を思えば、痛打すら前向きに捉えられる。7月20日の広島戦では、2点リードの7回に登板も味方の失策が絡む不運もあって3失点で救援に失敗。
それでも、チームに必要とされる今の背番号36には、すぐに出番がやってくる。2日後のDeNA戦では3点リードの7回に登板して3人斬りのリベンジ。「すごく緊張しました。前回登板の経験を生かすも殺すも、これからの自分次第ですし、自分の中で意味あるものにしていきたいと思っているので、その第一歩として、今日は良い投球ができて良かった」とたくましい一面を垣間見せた。
弱肉強食は、どこの世界にも存在する生きてゆく者の宿命。「ハマチ」も海の中で遭遇する数々の危機を乗り越えながら体躯を大きくしていく。キャリア最高の1年を過ごしている24歳も数々の困難を乗り越えての更なる成長曲線を見据える。
「今年終わった時にどれだけ今後の野球人生に大きな経験として残せるかというのは自分のテーマ。そういう意味では本当にすごい経験をさせてもらっている」
「ハマチ」にとどまるつもりはない。大海を勇ましく泳ぐ「ブリ」を目指す物語は始まったばかりだ。
【虎番13年“チャリコ遠藤”のタイガース豆知識】
そんな浜地が一番好きな魚はハマチではなく「ウナギ」。野球選手はウナギ好きが多い印象。コロナ禍前は秋季キャンプが行われる高知県にあるウナギ料理の名店に選手が足を運ぶことが多く、休日は店内にタイガースの選手しかいないぐらいの大盛況となっていた。
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