昨年7月26日、大阪府高槻市に住む高井直子さん(当時54)が自宅の浴槽で変死体となって発見された事件。真犯人が見つからない今年7月、事態が動き、親族の同意を得ないまま違法に高井さんと養子縁組になる手続きを踏んだとして、高井(旧姓・松田)凜容疑者(28)が有印私文書偽造・同行使の疑いで逮捕されていた。8月10日、警察は高井容疑者を、クレジットカードを不正利用されたと偽って購入代金をだまし取った詐欺の疑いで再逮捕した。
独身で一人暮らしだった高井さんには合計1億5000万円にも上る生命保険がかけられており、死因は溺死。何者かに首を絞められたような跡が残っていたという。保険金の受取人は高井凜容疑者だった。なぜ2人は“養子縁組”を結んだのか。事件の背景を追った「週刊文春」掲載の特集記事を公開する(初出:2022年8月4日号 年齢、肩書等は当時のまま)。
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都市銀行のグループ会社に勤める高井直子さん(当時54)が、大阪府高槻市にある自宅の浴槽で、変死体となって見つかったのは昨年夏。死亡推定日は、東京五輪の開会式が行われた7月23日とみられる。
1億5000万円の保険金 受け取り人は“28歳の養子”
「連休明けの26日、彼女が会社を無断欠勤したため、親族らが自宅を訪ね、発覚した」(捜査関係者)
右手首には結束バンドが緩く巻かれており、左手首にも痕跡が残っていた。
「直接の死因は溺死。何者かが両手首を結束バンドで縛り、顔を浴槽に沈めて殺害したとみられる」(同前)
独身で一人暮らしだった直子さんには、合計1億5000万円の生命保険がかけられていた。受取人になっていたのが、直子さんと養子縁組したばかりの高井凜容疑者(28)だったのだ。
1年が経過した今年7月20日。凜は養子縁組の書類を偽造したとして、有印私文書偽造・同行使容疑で大阪府警に逮捕された。
二人はもともと保険外交員と顧客の関係。契約していた二つの保険のうち一つは、凜が外資系のプルデンシャル生命保険に勤めていた時に結んだ契約だった。
遠距離に暮らす27歳差の男女間で養子縁組が成立したのは、直子さんが殺害される約5カ月前、昨年2月14日のことだ。
「2020年に結婚していた凜は、民法上、養子になるにあたり配偶者の同意が必要。だが、凜は妻の承諾を得ず、本人に成りすまして書類に記載し、高槻市役所に届け出ていた。これが今回の逮捕容疑です。一方、直子さんの記載部分に偽造はなかった。大阪府警は凜が直子さんの死に関わっているとみて、捜査を続けています」(社会部記者)