2010年3月15日に福岡県福岡市の能古島で、32歳の女性会社員・A子さんのバラバラ遺体が発見された「福岡OL死体遺棄事件」。

 現在も未解決なこの事件が発生した当初、A子さんの交遊関係についての捜査が続けられる一方で、福岡県警博多署に設置された合同捜査本部は、彼女の周辺で起きていた揉め事についての捜査も実施していた。(全2回の2回目/前編を読む)

能古島にて、遺体の捜索にあたる福岡県警捜査員 ©️小野一光

交通事故を起こした相手とのトラブルをSNSで投稿

 じつはA子さんは、09年11月に交通事故を起こした相手であるCとトラブルになっており、そのことを自身のSNSに記していた。以下はそこから抜粋した彼女の書き込みである。なおこれは09年12月末にアップロードされたものだ。

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〈実は先月、会社からの帰りに交差点内で私は直進で、相手は右折対向でバイクと事故をしました。

 

 お互いに少し言い分が違うという事で第三者事故調査機関に入ってもらい、また最終的に相手が診断書を提出したらしく物損から人身に変わり、誕生日の日に博多警察署へ出頭。私は被害者扱いの事情聴取。その後、第三者機関の公平な判断割合も私が15%で向こうが85%(※註:の過失)。相手の方は任意保険に入ってないらしく、バイクの修理を全部私の方の保険で負担して欲しいと言う相手の方と私の保険会社とは当然話が折り合わず、しまいには私の家まで行くと言い出したそうなので、弁護士を立てました。〉

 A子さんは通勤に使う自家用車、Cもまた通勤に使用する250㏄のスクーターに乗っていた。通常の事故ではあったが、相手のCのその後の行動が尋常ではなかったという。

〈今週の月曜に家の門前にチャリで本人らしき人がうろついてるのを見たから、月曜はいろんな人を巻き込んで帰りが遅くなってしまい、その後もかなり警戒して帰ってきてます。最近の私は本厄女全開ですよ仕事も色々追われている中で、中堅営業員として失敗もしてしまい、ホントにヘコンデマス

 

 マジで疲れてます〉

 このA子さんの書き込みに対して、友人がコメントを寄せ、事故の相手が女性であると勘違いしていたため、A子さんは次のようにコメントしている。

〈相手は男の人よ、年も近いし。

 

 でも今度家の前で見付けたら通報しますよ〉

 この文面にあるように、事故相手のCはA子さんと年齢が近い男性。海運会社に勤める彼はA子さんの遺体発見後、当然ながら事情聴取を受けていた。

 福岡県警担当記者Yは言う。

「A子さんが生前に不安を訴えていたこともあり、捜査本部も入念に調べていました。とはいえ、Cは遺体を運搬する際に不可欠な車を所有しておらず、レンタカーや友人からの貸与の有無についての捜査を実施したところ、該当する結果は出なかった」

手には防御創、頭蓋骨には数箇所のヒビが

 やがて4月9日から15日にかけて、福岡市の海上で、ゴミ袋に入ったA子さんの両腕に続き、胴体、頭部が次々と発見された。前出のY記者は次のように説明する。

「まず4月9日に福岡競艇場の遮蔽壁の内側で、黒いポリ袋に入った両腕が清掃作業中の職員によって引き上げられました。続いて14日には須崎埠頭で胴体が、さらに15日には同じく須崎埠頭で頭部が見つかっています」

 それらの遺体はいずれも死後に鋭利な刃物で切断されており、手の甲には生前、防御の際にできたと思われるアザが残り、頭蓋骨には数箇所のヒビが入っていたという。