A子さんは自宅室内で殺害され、解体されたのか
「A子さん宅の浴室に、部位や大きさはわかりませんが、内臓の破片があったそうです。ただしその破片は、血液反応が出ないほどに洗われているとのこと。捜査本部では彼女が殺害されたときの内臓の一部と見ています。つまり、A子さんは自宅で殺されたと考えられるが、血液の反応が出なかったのです。室内からの排水管、土管などを徹底的に調べたけど、血液反応は出ず、殺して短期間でそこまで洗えるのかどうか疑問ではあるが、そうとしか考えられない、ということでした」
つまり、行方不明になった3月5日の夜から一晩の間に、A子さんは何者かによって室内で殺害され、解体されたというのである。しかも室内の血液は完全に拭き取られ、下水の配管などにもその痕跡が残されていなかった、と。
合同捜査本部は当然ながら、遺体発見時の潮流を計算して、遺体が漂着した地点から予測される、投棄が行われた場所を割り出している。そこでも興味深い結果が出ていた。Z記者は明かす。
「投棄されたのは博多湾に流れ込む御笠川だという見方がされています。お気づきだと思いますが、御笠川といえば、A子さんの自宅アパートのすぐ近くを流れています」
A子さんの自宅アパートから御笠川は、1本の道が隔てているだけの距離しかない。当初、私を含めたメディアは、A子さんが室内から連れ出され、いずれかの場所で殺害、解体され、遺棄されたと見ていた。そのため犯行には、車両が必要不可欠であるとの思いもあった。しかし、もしA子さん宅が殺害、解体の犯行現場であれば、車両を使わずとも、目の前の御笠川から投棄が可能なのである。
捜査については、やれることはやり尽くした
当然ながら、そのことは車を持っていないCに対して疑いの目を向ける理由にもなるのだが、これまでの2度にわたる家宅捜索では、血液反応などは検出されていないという。
この事件の今後の展望について、取材をしてきたZ記者が捜査員の心情を代弁する。
「捜査については、これまでにやれることはやり尽くしたというのが、正直なところです。新たになにか別件で引っかかって、その犯人が自供しないかぎりは無理ではないか、という見方がされています」
A子さんの無念を晴らすためにも、予想もしないところから劇的に解決、となることが待たれる事件なのである。