今、東北がアツい。
その理由は言わずもがな。夏の甲子園で宮城代表の仙台育英が優勝し、深紅の大優勝旗がついに白河の関を越えたのだ。
仙台市中心部のパブリックビューイング会場では多くの人が戦況を見つめ、優勝が決まった瞬間は大きな拍手に包まれた。決勝翌日、ナインが仙台駅に到着したのは午後3時前。乗っていた新幹線の情報は非公開だったものの、どこからか噂を聞きつけた県民が、また一人、また一人と新幹線改札口前で足を止める。気付けばすでに多くの人だかり。警備員も多数出動し、物々しい雰囲気に包まれる。ナインが到着すると、割れんばかりの拍手と、おめでとう、ありがとうの声が、仙台駅の一角を包んでいた。それだけこの出来事が、仙台・宮城・東北の悲願であったことを裏付けていた。
7年前に仙台育英が準優勝したとき、そして今回の優勝、ともに現地・甲子園で取材をさせてもらった。私自身もあの時の悔しさがずっと胸に残っていただけに、優勝の瞬間は1塁側アルプス席で涙が止まらなかった。
東北の球児が頑張った。東北唯一のプロ野球球団・楽天イーグルスもこの勢いに続いて欲しい。そんな思いから、今回のコラムを書かせていただく。
仙台育英に続け、今年を東北の年にしたい
悲願の東北初制覇。楽天球団の関係者も多くのコメントを寄せていた。まずは石井一久監督。
「仙台育英高校の皆さん、甲子園初優勝おめでとうございます。悲願である、東北勢初の優勝に大変うれしく思います。一生懸命プレーする選手の皆さんに勇気をもらいました。今度は僕たち楽天イーグルスの番です。今年を『東北の年』にできるよう、僕たちもチーム一丸、戦ってまいります」
楽天生命パークでは2回裏終了後に毎回大きなビジョンにその日の主なニュースが報じられる。甲子園期間中、ビジョンが仙台育英の勝利を伝える度に、スタンドのイーグルスファンからは自然発生的に拍手が起こっていた。甲子園決勝のアルプス席には、恐らく宮城から足を運んだであろうイーグルスの帽子を被った方が何人もいた。甲子園優勝にイーグルスも続いて欲しい、と多くのファンが期待している。
仙台育英高校OBで、おととしからイーグルスのユニフォームに袖を通している星孝典2軍バッテリーコーチ。
「優勝おめでとうございます。須江監督が1つ下の年齢で、マネジャーとしてセンバツで準優勝をした経験もあり、今回は監督としてチームを率いて日本一になられたというのは素晴らしいことだと思います。東北を代表して優勝できたことは、みんなが待ち望んでいたと思いますし、いちOBとしても大変嬉しく、心から本当におめでとうという気持ちです」
2018年から仙台育英野球部を率いる須江航監督。高校時代は学生コーチを務めていた。その時の経験が、今に生きている、と話している。現役時代は控え選手で、どうやったら自分はゲームに出られるのかを常々考えていた。だからこそ、選手を見極める力、チームを作り上げる力に長けているのだろうと感じる。
去年ドラフト5位で入団した入江大樹内野手は、現在、球団ただ一人の仙台育英出身の現役選手だ。同期入団では唯一の野手として、将来性を期待されている。
「甲子園優勝、おめでとうございます。東北勢初の優勝ということで歴史的な快挙だと思いますが、自分としても今の3年生の選手たちは一緒にプレーした選手たちですので、自分のことのようにうれしいです。彼らが優勝できるチームになったことも驚きですが、甲子園の試合などを観ていて、1戦1戦チームが1つになって強くなっていくことが伝わってきました。優勝できたことは選手たちの力でもありますが、監督やコーチ、保護者や支えてくれた周りの方々のおかげでもあると思います。これからの人生でも優勝したチームの一員として、誇りと自覚、責任をもってほしいですね。本当におめでとうございます」
入江選手がプロで活躍することが、後輩たちにとっても刺激になるだろう。今後の飛躍に期待したい。