「午前2時半頃、大人が言い争うような大声と悲鳴で目が覚めました。なんだろうと思っていたら1時間くらいしてまた『バン!』と大きな爆発音がして、様子を見るために窓を開けたら煙が一気に部屋に入ってきました。最初は火事だと思いましたが、すぐにパトカーや救急車が10台ぐらいやってきて……。『刺された!』と言う声が聞こえ、首のあたりから血を流した男性が担架で運ばれていく姿も見えました。タダ事じゃないと思いました」(近隣住民)

燃えた自宅では現場検証が行われていた ©︎文藝春秋

 盆休みも終わりを迎えようという8月15日深夜、通報を受けて火災現場に急行した警察官が目にしたのは、炎が舞い上がるなかで包丁を持って争う、血だらけの兄弟の姿だった。

「長男がナイフで親族に刺された」

 千葉県君津市の一軒家で、住民男性4人が刃物で刺され死傷し、火災が発生する悲劇が起こった。現場の一軒家に住むのは総勢10人の大家族で、40代のAさん夫婦と3歳~22歳までの6人の子供に加えて、Aさんの父、Aさんの弟の坂上卓さん(40)が1つの家に暮らしていた。

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 警察に通報があったのは、午前3時40分頃のこと。Aさんの妻から「長男がナイフで親族に刺された」と通報があり、警察官が駆けつけると、Aさんと弟の卓さんが2階の廊下で争っていた。そして卓さんの手には刃渡り約17センチの包丁が光っていたという。

広範囲に規制線が張られている ©︎文藝春秋

 すぐに警察官は坂上さんから包丁を取り上げたが、その時点で坂上さんは右鎖骨付近に深い刺し傷を負っており、搬送先の病院で死亡した。Aさんとその長男(22)、次男(15)も首や胸に切り傷を負って重傷。大家族に一体何が起きたのか、そして誰が誰を刺したのか――。真夜中の“親族間トラブル”について、社会部記者が解説する。

「怪我をしたAさんとAさんの2人の息子たちは、『弟(卓さん)に刺された』と話しています。卓さんが同居する兄の子供たちに次々と切りつけ、家に火をつけた、という証言です。火が燃え広がる中、Aさんが弟を止めようとして揉みあっているところへ警察官が到着し、卓さんを取り押さえました。卓さんの致命傷になった胸の傷は自分でも刺せる位置で、一家心中を狙って兄たちを刺した後に自傷した可能性もあります。ただいまだに事件の全貌はわかっていません。県警は3人の回復を待って詳しい事情を聞く方針です」