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鳥谷敬が語る阪神がCS進出するために必要なこと

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/09/02

引退しても、走っている距離は現役以上

 現役を引退して初めて迎えたシーズンも、残すところあと1カ月余り。この1年はありがたいことに、多くのメディアから声をかけてもらい、現役生活とは違った刺激を受けながら毎日を過ごしている。

 久しぶりに会った人からはたまに「痩せた?」と言われる。

 たしかに、体重は4キロほど落ちた。

 一番の要因は長距離走をするようになったことだ。マラソンのイベントに携わらせてもらっていて、みんなに「走りましょう!」とランニングを勧めているのに自分が走れなければシャレにならない。そこで、時間を見つけて走るようになった。

 現役時代はダッシュや中距離走しかやってこなかったから、単純に「走っている距離」だけなら今の方がはるかに上だ。

現役時代の筆者・鳥谷敬 ©文藝春秋

 その上で、ウェートトレーニングも続けている。大した理由ではないが、引退したからといって太りたくはないし、自分の中でもルーティン化しているからだろう。

 ルーティンは「習慣」とも置き換えられるが、プロ野球選手にとっては「準備」の意味合いも強い。1年間、レギュラーシーズンだけで143試合。それを5年、10年と続けて、なおかつ高いパフォーマンスを維持するためには「準備」が不可欠だ。

 毎日、同じ時間に球場入りしてアップをし、メニューをこなし、試合に臨む。そういう準備の積み重ねが、長く活躍するために必要なモノだとも思う。

 当然、毎日同じように準備をするためには、試合での「役割」も同じ方がやりやすい。

 投手なら先発、リリーフと役割分担され、先発なら中6日で登板日があらかじめわかっていた方がいいし、リリーフだってどんな試合展開で起用されるかわかっていた方が準備はしやすいだろう。

 野手も同じだ。理想を言えば、毎試合、同じポジション、同じ打順で起用してもらった方が、実力は発揮しやすい。

 ただ、これはあくまでも選手目線=使われる側から見た話だ。使う側、つまり首脳陣からすれば「選択肢」は多いほうがいい。

 どんな世界でも使われる側と使う側の思惑は決して合致するわけではない。

 今季の阪神を見てもそうだ。もっとも顕著なのが、大山悠輔、佐藤輝明両選手の起用法だろう。チームでは4、5番を任される「打の中心」だが、守備位置が固定されているわけではない。ふたりとも、三塁、外野での併用をメインに、試合によってポジションが変動している。最近では佐藤選手が二塁を守るケースもあった。

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