昭和女子大学の理事長・総長で、300万部のベストセラー『女性の品格』の著者である坂東眞理子氏。そんな坂東氏が2022年6月30日に新著『女性の覚悟』(主婦の友社)を上梓した。
坂東氏は同書の中で「人生100年時代に50歳前後の女性がどう生きるのか。その大前提はひとりひとりの女性が『覚悟』を持つこと」としている。自分の人生に責任を持ち、1日1日を丁寧に暮らすことが、「覚悟」を持つことにつながるそうだ。
ここからは、『女性の覚悟』からさらに一部を抜粋して、50歳前後の女性が豊かに暮らす一助となる「ほめる力」について紹介する。(全2回の2回目/1回目から続く)
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50歳を過ぎたらお人よしがよい
50歳を過ぎると周囲からこわがられる女性が増えます。こまごまとした日常のしきたりやマナーに詳しく、未熟な若者のミスを見逃さない。ちょっとむつかしい人です。こうした周囲からおそれられ、一目置かれる存在の女性になるのを目指す人もいます。
しかし私は歳を重ねたら意識して「お人よし」にふるまうようすすめます。年長の女性は自分では「普通」にふるまって「普通」に話しているつもりでも、相手を批判したり、欠点を指摘しているように見られがちです。意識して「よしよし」と話を聞いているようにしましょう。相手があいさつしないなら自分からは声をかけないなどと言わず、年下の人にも気軽に自分のほうから言葉をかける。
そして自分の「得」にならなくても手伝ったり、付き合ったり応援するよう心がける。相手に教えよう、導こうとするのではなく、相手を知ろう、理解しようと努める。
若いときは言いたいことも言わず、忍耐を続けていると、忘れられ軽んじられます。自分の意見をどう伝えるか工夫してしっかり自己主張することも、それに対する批判や反発を受けて自分の誤りにも気がつき鍛えられますから、悪くありません。
しかし50歳を過ぎてもあいかわらず自分の意見を主張し、自分のやり方にこだわり自分の権利を守ることにきゅうきゅうとしているのはいかがなものかと思います。そうでなくともとかく歳を重ねていくと、自分では意識しなくても「むつかしい人」と見られることが多くなっていきます。
しかも気をつけて周囲を見てみると自分の権利を主張する人はそんなに得しているとは言えません。短期的に損をしないようにしていると、長期的に損をするのです。