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『女性の品格』の著者・坂東眞理子が「2000万円の貯蓄より必要」と語る、50代女性の人生を豊かにする“人間関係の築き方”

『女性の覚悟』より #2

2022/09/15
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周囲を変える「ほめる力」

 ぜひ、歳をとったら「ほめ上手」になりましょう。お世辞ではなく、その人の長所を見つけ、努力に気がつき、それを伝えましょう。周囲の人の欠点や失敗は見のがしても成功や幸運を見のがさず、できるだけ祝福する。これはとてもむつかしくつい自分と比べてしまいがちですが、意識してほめる。若い人をたしなめたり教えようとしたりするより、善い行動をほめると相手がこの行動を好むようになります。「ほめる力」は周囲を変えるのです。

 損得抜きで後輩や友人の世話をして、恩着せがましくない人にはみんな感謝し、「なんていい方だろう」という無形の評価が高まります。組織の中でも人事に影響力のある人にギフトを贈りペコペコし、力のない人を馬鹿にしているような人はいつの間にか人望がなくなっています。

 人生後半期に必要なのは2000万円の貯蓄より「あの人に力をつけてもらった」「あの人にお世話になった」「あの人に助けられた」という自分の「したこと」であり、それにともなう評判です。これが無形資産です。

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 私も若いころにごちそうになるばかりの年長の友人がいましたが、最近はこちらがお招きできるようになってうれしく思っています。お世話になった彼女から頼まれたことはできるだけ実行します。私に限らずだれでも若いときに世話になった人には、感謝の気持ちを持ち続け、ご恩返しをしたいと思い続けています。「情けは人の為ならず」ということわざがありますが、ほかの人に親切にしておくといつの間にか自分への親切となって帰ってくるのです。

写真はイメージです ©iStock.com

「人の世話ができるときに人の世話をしておくのが一番の将来への投資だ」「運に恵まれたときは人と分かち合うようにすると、さらに運がよくなる」と心がけましょう。そうした人たちは損をしている、お返しを求めない「お人よし」のように見えますが、実はそういう方が無形資産に投資して一番たくさんのリターン(報酬)を受け取っているのではないかと思います。

 リターンは感謝の気持ちだけのときもありますが、ときには面白い仕事の紹介、重要な方への紹介、子供へのサポートなどいろんな形で帰ってくることがあります。「面倒な仕事だが、だれかがやらなければならないからしょうがないか」と引き受ける人のところに仕事も友人も、よい評判も集まってきます。