1ページ目から読む
3/5ページ目

3DKの団地で、家族5人暮らし

――ほしいものの中に、マイホームというのはなかったんですね。

多良 全然ありませんでした。結婚当初に住んでいた主人の実家は、だだっ広い一軒家だったのですが、大きな家というのは無駄が多いのです。掃除も大変で。それに私は狭いところが好きなんですよ。

 この団地で、最初は家族5人で暮らしていたから手狭でした。でも、子どもたちが巣立って、主人と私の2人になったら、襖を全部取り払って2つの部屋をワンルームにしました。子どもたちのベッドや机もどんどん捨てて。

ADVERTISEMENT

©文藝春秋

――子どもたちの意見は二の次?

多良 いえいえ、そんなの聞きませんよ。私のいらないものはいらないんです。

――もういなくなっちゃったんだから、と(笑)。

多良 そうそう。そうやって大きな家具をなくして、部屋を風通し良くすっきりさせたら、空気感ががらりと変わりました。どこにいても主人の顔が見えるようになって。掃除もしやすいし。狭い部屋も暮らし方次第だな、と。

©文藝春秋

亡き夫の思い出のソファを捨てたわけ

――世の中って、無い物ねだりじゃないですけど、誰かと比べてしまうじゃないですか。そうじゃないと。

多良 自分の型を作るのが大切ですよね。身の丈に合ったもの。それ以上のことを、私は望みません。

 一人になったら一人になったで楽しめばいい。趣味に時間を使うのも、お酒をたしなむのも自由。みんな私のものという感じです(笑)。そう考えると、自分の動きやすいようにしたほうがいいんじゃないかと思って、主人が亡くなったときはソファーを捨てましたし、彼の洋服を処分したら、洋服ダンスと和ダンスも必要なくなったので捨てました。