――最後は奥様の一声で。
鈴ノ木 そう。「これは絶対やるべきだ。失敗したっていいじゃない」と言ってくれたんですよ。ただ漫画は、本当にしんどいんですよ。締め切りを守るのは大前提ですが、あとスタッフを使ったりとかも大変で……。今まで「ロックだぜ!」ってやってきた人間で(※編集部注:鈴ノ木さんは、漫画家になるまではミュージシャンだった)、人を使ったりも初めてでしたし。漫画にすべてを捧げないとできないんですよね。それくらいしんどかったので。やり始めたら楽しいのはわかっていたんですが、楽しいけどあそこかぁって思ったら、どんどん歯車が大きくなっちゃって。
「嫌だよなと思うけど、楽しい。ドMなのかな」
――今、鈴ノ木さんから「楽しい」って話がありましたが、泰さんは漫画を描くことに楽しさを感じますか?
泰 鈴ノ木先生のお話を聞いていて「あ、楽しいんだ」って思いました(笑)。あんな大変なお仕事なのに。
鈴ノ木 いやいや。でも大変ですよね。
泰 大変ですよね。黙々とやるだけで、楽しさも苦しさも考えてないです。楽しいと思ったことたぶんないと思う。
鈴ノ木 えー!
泰 だからさっき、鈴ノ木先生すごいと思いました。
鈴ノ木 たしかに。でも僕は楽しさ感じますね。嫌だよなと思うけど、楽しい。ドMなのかな(笑)。
泰 ふふふ(笑)。
鈴ノ木 まあ、ネームを考えなきゃいけないときは「またきたか、ここが」と思う。何よりネームを大事にしているので、いちばん時間がかかるんです。極端な話、絵はどうせ描くならうまく描きたいなくらいの感じで、楽しくやれますね。いや、でも嫌かな。いちばん楽しいのは、一本上がったときですかね。「あー。今週も乗り切った!」って。
――でも、次の週はすぐにきますよね。
鈴ノ木 そうですね。一瞬ですよ、楽しいのは。秒ですよね。一本上がると、ちょっと楽しい。楽しいというより「よかった」かな。
――単行本が書店に並んだりすると楽しくないですか。
鈴ノ木 見に行く時間とかほんとないんですよ(笑)。現実は。
――泰さんは?
泰 「無」ですね。感情はそんなにありません(笑)。
癒しは「半身浴」「ウズベキスタンのハチミツ」
――そんな忙しい日々における癒しを教えてください。
泰 汗をかくのが好きなので、運動したり半身浴したりするくらいですね。すいません、普通で(笑)。
鈴ノ木 僕は、基本的に空を見たりくらいかな。でも、そういう日々の癒しも作んなきゃなと思いますね。ほんと何にもないな。息子と話すくらいかな。あ、最近、ウズベキスタンのハチミツにはまってますね。
――その産地は大切なんですか。
鈴ノ木 そう。ウズベキスタンじゃないとダメなんです。ぜんぜんちがうんですよ。それをヨーグルトに入れて食べることに癒しを感じていますね。本当にうまいんです。妻がネイルをやってもらっているところが副業で輸入もやっているんですが、最近、味をしめてボッタクるようになったから、もう手に入らないかもしれないって。
――ウズベキスタンの人が?
鈴ノ木 そう。ハチミツが儲かるとわかって、値段を釣り上げてきていて、僕はそこに脅威を感じていますね。
(#2に続く)