3打席連発の衝撃

 それにしてもあの試合……。7月31日甲子園ヤクルト戦。2連勝しての3戦目、6回まで2点リードしていたのに、試合終盤の7回追撃、9回同点、11回勝ち越しと、村上に3連発を許して逆転された試合。あれが2022年のハイライトシーンになるのは間違いない。あれがあったから今ヤクルトはここにいて、阪神はここにいる。

 なんとかならなかったんかいな……と今でも悔しいが、しかし村上という選手がやってのけたことには敬服しかない。

 9月7日の試合を終えた時点の村上の成績は以下。

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打率(1位) .339(2位は中日・大島で.326)
HR(1位)  52(2位は読売・岡本で25)
打点(1位)  127(2位は阪神・大山で80)

 本塁打、打点の二冠は確定だろう。唯一「未確定」の打率も十分なセーフティーリードがあるし、今もなお不調の兆候はないので、どうやら三冠王が誕生しそうだ。

 今の阪神みたいに、いい投手がたくさんいるのもいい。足が速くて小技の使える選手がいるのももちろんいい。だけど、やっぱり圧倒的なバッターがいると単純に楽しいし、単純にワクワクする。そういう選手がいるのは本当に羨ましい。

 過去を振り返ってみると、数少ない阪神の優勝には必ずずば抜けて打つ選手がいた。大山、佐藤輝にはその素質がある。来年、村上の一角を崩せる選手になるのを期待している。

「村神様」と「神様バース様」との類似点

「村神様」なる言葉が生まれるほど、圧倒的な存在感を誇る村上。セ・リーグで三冠王誕生となると、「阪神タイガースの唯一神」ランディ・バース以来だという。

ランディ・バース

 確かに今年の村上の存在感は、「バース以来」で間違いない。件の3打席連発の試合のように、「一人で勝った試合」がいくつもあるが、バースもそうだった。試合を支配し、他の選手とはひとり違次元の存在だった。

 内・外、高・低、関係なく、ストライクならライト・センター・レフトどこでも放り込んでしまうのも同じ。パワーがあるのは間違いないが、打席のたたずまいは「剛」というよりもむしろ「柔」。ハードヒットというより、むしろ右足をそっと下ろして正確にミートした結果がホームランになるという「静」のスタイルも似ている。

 ちなみに、2年連続三冠王、バースの成績は以下。

1985年(130試合制)
打率(1位) .350
HR(1位)  54
打点(1位)  134

1986年(130試合制)
打率(1位) .389
HR(1位)  47
打点(1位)  109

 時代が違えば、野球も違うので数字の比較にたいして意味はないが、今年の村上の数字は1985年のバースにそっくり。ひょっとしたら来年は、史上最高打率.389にチャレンジできるくらいに打撃を極めてくるかもしれない。それは困るので少なくとも阪神はなんとかしよう。