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《抗争8年目》「何もかもカネだ」山口組分裂騒動・神戸山口組の弱体化に拍車をかける「“組長の引退”問題」

《抗争8年目》「何もかもカネだ」山口組分裂騒動・神戸山口組の弱体化に拍車をかける「“組長の引退”問題」

山口組分裂7年 #2

2022/09/04

genre : ニュース, 社会

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任侠団体山口組の旗揚げ以上の衝撃的な離脱劇

 一方、神戸山口組をめぐっては、任侠団体山口組の旗上げ以上の衝撃的な離脱劇が起きた。2020年8月、山健組が独立を宣言したのだ。「今般私儀 諸般の事情に鑑み神戸山口組を脱退いたす事を決意致しました」と毛筆の書状が暴力団社会に回された。文末には「令和二年八月 五代目山健組々長 中田浩司」と記載されていた。また、同年7月には、豊富な資金力を誇っていた池田組も神戸山口組からの脱退を表明していた。

山健組が神戸山口組から離脱することを伝えた書面

 山健組、池田組ともに、6代目山口組から離脱した13組織のなかでも中心的な5組織のうちの2組織だった。離脱の理由について当時から動静をウオッチしてきた警察当局の幹部は、「山健組、池田組が脱退したのは、返し(報復)を許されなかったためと考えられる」との見方を示した。

 山健組については、ナンバー2である若頭の与則和が2019年4月に6代目山口組弘道会系組員らに刺されて重傷を負う事件が起きていた。池田組では、2016年5月に若頭の高木昇が射殺され、2020年5月にも高木の後任の若頭、前谷祐一郎が銃撃されて重傷を負った。暴力団同士の抗争では即座に報復がなされるものとみられたが、しばらく動きはなかった。

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 ただ、山健組では組長の中田本人が2019年8月、6代目山口組弘道会系組員を銃撃。年末になって逮捕された。池田組の報復はなかった。神戸山口組組長の井上邦雄が許さなかったためとされた。前出の警察当局の幹部は、「井上が返しを許さなかった理由は分からない。それで、山健の中田はヤクザとして返しをせざるを得ずに自らやったのだろう」と推測する。さらに、「山健組と池田組が脱退したのは、ヤクザとして納得できなかったからではないか。世間からも『どうしたことか』といった目で見られる。耐えられなかったのだろう」とも付け加えた。

脱退した山健組が6代目山口組に復帰

 神戸山口組にとってさらなる大きな痛手が待ち構えていた。脱退した山健組が6代目山口組に復帰したのだった。組織が大幅に縮小するだけでなく抗争相手の組織拡大をアシストしたようなものだった。

 離脱の動きはこの夏にも表面化している。神戸山口組結成時からのオリジナルメンバーで若頭の要職にある、侠友会会長の寺岡修が8月、脱退を決意し、独立組織として活動することとなった。組織が縮小していくなかで、寺岡は水面下で井上の引退などで事態を収拾する活動を進めていたが、成果を得ることはなかった。

 神戸山口組の事情に詳しい指定暴力団幹部は、「井上は周囲の説得に耳を傾けることもあったようだが、結局は決断しなかった。それどころか『最後の1人になってもやる』『80歳までは続けたい』などと話しているようだ。井上は今年8月に74歳になったばかり。これでは周囲は離れて行く」と明かす。

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