国内最大の暴力団組織「6代目山口組」が分裂したのは7年前の2015年8月のことだった。離脱した「神戸山口組」との間の対立抗争はすでに8年目となり長期化している。事務所への発砲や車両突入、繁華街での乱闘騒ぎだけでなく、拳銃を使用しての殺人事件などが相次いだため、警察当局は圧力を強めてきた。2020年1月には暴力団対策法に基づき、伝家の宝刀とも呼ぶべき「特定抗争指定暴力団」に双方を指定し、活動を強く規制している。
さらに近年は、各地の暴力追放運動推進センターの申請によって事務所の使用禁止が相次ぎ、拠点を失う組織も多い。特定抗争指定暴力団の規定や事務所の使用禁止などは2012年の暴対法改正で設けられた規定だ。警察による勢力減少に向けた対策が着実に進められている。(全3回の3回目/#1、#2を読む)
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「同じ暴力団組員がおおむね5人以上で集まる」ことを禁止
特定抗争指定暴力団とは、指定暴力団のうち対立抗争状態にあり一般市民に重大な危害が加えられる恐れがある場合に、暴対法に基づき都道府県公安委員会が指定した組織をいう。この規定は2012年の第5次暴対法改正で新設された。特定抗争指定暴力団に指定されると、公安委員会が「警戒区域」を定め、区域内では次のような行為が禁止される。
・同じ暴力団組員がおおむね5人以上で集まる
・組事務所の新設、立ち入り
・対立する暴力団組員へのつきまとい
・対立する暴力団事務所やその組員の居宅付近をうろつく
こうした行為が確認されれば、中止命令などの行政手続きを経ずに、即座に逮捕される直罰規定となっているのが大きな特徴だ。
分裂したのは2015年8月だったが、6代目山口組と神戸山口組の双方が2020年1月になって特定抗争指定暴力団に指定されたのは、2019年10~11月に凶悪事件が続発したためだった。同年10月、神戸市の神戸山口組山健組(当時)の本部事務所近くで同組系の組員2人が同時に射殺されたほか、11月には兵庫県尼崎市で神戸山口組幹部が自動小銃で数十発の銃弾を浴びて殺害された。
警察当局の幹部は当時、「この2つの事件の発生だけでも、特定抗争指定暴力団とするに十分だった」との考えを示していた。
兵庫や大阪、愛知などの公安委員会は当初、双方の拠点が多くある大阪市や6代目山口組の中核組織の弘道会本部がある名古屋市、山健組が事務所を構える神戸市など関西や東海地方などの6府県10市を警戒区域に設定。事件が起きるたびに警戒区域を追加していき、最大時で10府県20市町となった。その後、岡山市に拠点を構える池田組が神戸山口組から離脱したことで、岡山県公安委員が2021年10月に同市を解除するなど、警戒区域は現在、9府県16市町となっている。