国内最大の暴力団組織「6代目山口組」が2015年8月27日に分裂し、傘下の有力2次団体であった13組織が離脱して結成した「神戸山口組」との対立抗争状態は7年が経過した。警察庁によると、これまでに双方の間の対立抗争事件は約90件で、8人が死亡している。対立抗争によるものではなく移籍をめぐる内輪もめのようなトラブルを含めると事件は100件以上となり、死者は十数人に上る。対立抗争状態は6代目山口組が優勢な状況が続いているが、8年目を迎えた今年に入り抗争再燃とみられる事件が多発しているのが現状だ。(全3回の1回目/#2、#3を読む)
◆◆◆
分裂した2015年は山口組創設100年のメモリアルイヤー
分裂から7年となるのを前に、6代目山口組は組織の機関紙である「山口組新報 第26号」(2022年7月1日号)を発行。6代目山口組若頭補佐で中核組織である弘道会を率いる竹内照明が1面に巻頭言を寄せた。その一部では分裂について以下のように書き綴っている。
「平成27(2015)年という年は、創設百年というおめでたい年でありながら、13名の脱落者を出した年でもあります。今日までの間、親分のお気持ちを推察し断腸の思いに苛まれる日々です。我々山口組は一日も早く本来のあるべき姿に戻り、山口組綱領前文のとおり、国家社会の興隆に貢献し、もって斯界の共存共栄を目指していかねばなりません」
山口組は1915(大正4)年に神戸市で結成された。巻頭言にもあるように、2015年は創設100年のメモリアルイヤーであった。2015年の年始早々の1月25日に神戸市内の山口組総本部では記念行事が開かれ、稲川会や松葉会、会津小鉄会などの友好組織の最高幹部が集まりお祝いムードに包まれた。この日は6代目山口組組長の司忍の73歳の誕生日ということもあり、行事はさらに盛り上がりを見せた。
警察幹部が分析「直参でありながら勝手に出て行った脱落者への非難」
しかし、この年の8月、6代目山口組から傘下の主要組織だった山健組、宅見組、侠友会、池田組、正木組の5組織を中核とした13組織が離脱。神戸山口組を結成し、公然と反旗を翻したのだった。巻頭言に書かれた「13名の脱落者」とは、離脱した組織の代表者である山健組組長の井上邦雄や宅見組組長の入江禎らを指していた。
巻頭言では、「我々山口組は一日も早く本来のあるべき姿に戻り…」と記述されている。この点について、長年にわたり組織犯罪対策を担ってきた警察当局の幹部は、「これは親分である組長の司から子分としての盃を受けた『直参』と呼ばれる直系組長でありながら、勝手に出て行った離脱者たちへの非難、さらには神戸山口組を解散させて再統合することを意味するものと解釈できる」と読み解いてみせた。