2019年秋、神戸山口組幹部が大型の自動小銃で銃殺され潮目が変化
分裂直後は神戸山口組に加入する組織が相次ぎ、勢いがあったのは事実だった。しかし、2019年秋に6代目山口組側が引き起こす凶悪事件が続発したことで事態は急変した。同年10月、神戸市の神戸山口組山健組(当時)の事務所近くで、同組系の組員2人が同時に射殺されたほか、翌11月には兵庫県尼崎市で神戸山口組幹部、古川恵一が銃撃され死亡した。
古川が殺害された事件で使用されたのは、「M16」という大型の自動小銃だった。古川は数十発の銃弾を浴びせられており、残忍さが際立った事件だった。双方の事件で逮捕されたのはいずれも6代目山口組系の幹部や元組員たちで、この時期には神戸山口組系の事務所へ車両が突入する事件なども続発した。
古川殺害事件は犯行形態の残忍さから対立抗争の潮目を変えることとなり、この事件をきっかけに神戸山口組を脱退する傘下組織が相次ぎ、以後、6代目山口組側は優勢となっていく分岐点とも言えた事件だった。警察庁による最新データによれば、2021年の6代目山口組の構成員は約4000人で、神戸山口組は約510人となっており、勢力差は明らかだ。
「そもそも分裂したのは高山が服役中であることをチャンスと見て、山健組などが決起した」
6代目山口組が攻勢を強めた理由について、当時の状況を知る警察当局の幹部は、「何よりカリスマ性のある高山の出所の影響が大きい」と指摘する。高山は2010年10月、恐喝事件で逮捕され、刑事裁判で懲役6年の実刑判決が確定して服役。2019年11月に刑務所を出所したが、その前後に6代目山口組側が引き起こす事件が続発した。
前出の警察当局の幹部は、「6代目(山口組)側の2次団体による事件が続発したのは高山に向けて、『神戸(山口組)を攻めている』と自らの存在のアピールと考えられる。そもそも分裂したのは高山が服役中であることをチャンスと見て、山健組などが決起したと考えられる。6代目山口組の分裂問題は、何もかもすべて高山を中心に動いている」との考えを示した。
分裂から間もなく7年になろうとしていた今年6月、神戸市内にある神戸山口組組長の井上の自宅へ向けた発砲事件が発生したり、前月の5月には大阪府豊中市内の神戸山口組宅見組組長の入江の自宅に車が突入する事件も起きるなど、一時期は鎮静化していた対立抗争は再燃が危惧されている。
抗争が長期化するも最終局面を迎えつつあるなか、6代目山口組の優勢な状態は今後も変わることはないとみられる。だが、事態収束に向けた糸口はまだ見いだせていない。(文中敬称略、一部の肩書は当時)(#2に続く)
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