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「追い込みすぎると別の恐れが…」暴力団業界のビッグネーム山健組“事務所使用禁止”の衝撃 山口組分裂問題で激化する「警察とヤクザの暗闘」

山口組分裂7年 #3

2022/09/04

genre : ニュース, 社会

「つまらないことで逮捕されることがないよう」新幹線は少人数で分散して乗車

 5人以上で集合すれば即逮捕となるため、警戒区域内での会合などの開催は出来ないうえ、公共交通機関での移動でも不便を強いられることとなった。最近も新幹線の利用で暴力団側が神経をとがらせていることがうかがえる出来事があった。

 警察当局は、6代目山口組組長の司忍をはじめとした最高幹部たちが今年6月17日に、川崎市内の稲川会山川一家本部を訪問するとの情報を入手。動向視察のため捜査員らが東海道新幹線の新横浜駅で待ち構えていたところ、午前10時ごろに若頭の高山清司らが到着する。その他の組員らも順次到着し、10時半ごろに組長の司が姿を見せた。

 到着時間にずれがあったのは、名古屋駅は警戒区域内のため、出発の際に5人以上で集まっていると逮捕されることが危惧され、数本の新幹線に少人数で分散して乗車したためとみられた。横浜市内は警戒区域ではないため、到着後は十数人で集合して数台の車に乗り込み川崎へ向かった。

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 訪問の目的は体調を崩していた稲川会総裁、清田次郎の快気祝いだった。帰路でも名古屋駅に到着する際には5人以上とならないよう、新横浜駅では時間をずらして新幹線に分散して乗車するといった徹底ぶりだった。

 6代目山口組系の幹部は実態について次のように明かす。

「つまらないことで逮捕されることがないように注意を怠ることはない。会合を行う場合は、警戒区域外に本部がある組織の事務所に集まる。新幹線に乗る場合には本部に連絡を入れて(他の傘下組織の組員と)バッティングしないように調整する。数台の車で移動する際にも、車列が連ならないように距離を空けることになっている」

事務所の使用禁止で閉鎖に追い込まれる

 特定抗争指定暴力団としての規制以上に、近年の暴力団にとって事務所の使用禁止が深刻な問題となっている。事務所の使用禁止の規定は、特定抗争指定暴力団と同時に第5次暴対法の改正で新たに設けられた。手続きとしては、各地の自治体の外郭団体である暴力追放運動推進センターが地域住民からの委託を受けて、裁判所に暴力団事務所の使用禁止の仮処分申請がなされる。この規定によって近年、多くの事務所が閉鎖に追い込まれている。

山口組弘道会本部で「特定抗争指定暴力団」に指定されたことを示す標章を貼る愛知県警の捜査員 ©️時事通信社

 最近の事例では暴力団業界のビッグネームである山健組の事務所の使用禁止が認められた。暴力団追放兵庫県民センターが今年3月、暴対法に基づいて神戸市内の6代目山口組山健組の本部事務所の使用禁止を申し立て、神戸地裁が5月に、使用を差し止める仮処分を決定した。6代目山口組の傘下組織では、今年6月に鳥取県米子市内の大同会の事務所の使用禁止が認められたケースなどもある。

 神戸山口組では、本部事務所として一時期、使用されていた兵庫県淡路市内の侠友会本部事務所が2017年10月に使用禁止の仮処分申請がなされ、その後、自主的に閉鎖。大阪市内の宅見組本部事務所も2021年2月に同じく使用禁止となった。

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