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「追い込みすぎると別の恐れが…」暴力団業界のビッグネーム山健組“事務所使用禁止”の衝撃 山口組分裂問題で激化する「警察とヤクザの暗闘」

山口組分裂7年 #3

2022/09/04

genre : ニュース, 社会

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使用禁止の事務所へ入れば『建造物侵入罪』

 事務所の重要性について首都圏で主に活動している指定暴力団の幹部は、「事務所での定期的な会合は絶対に必要だ。全員が集まったところで親分が顔を出す。そこで緊張感が生まれ組織が引き締まる。親分の身辺の世話をしている部屋住みの若い衆にとってみれば、会合があれば兄貴分から小遣いをもらえることもある」と明かす。

 特定抗争指定暴力団の規定にも「事務所への立ち入りの禁止」といった文言があるが、対立抗争が終了すれば解除される。このため抗争終結で事務所を再び利用することができるが、裁判所が使用禁止を認めた場合は、暴力団としての活動自体を停止しなければ再度の利用は望めない。このため半永久的に使用は不可能で活動拠点を失うことになり、意味合いは大きく異なる。

 事務所を使えないことによる暴力団側の苦境に対して、警察当局の幹部は、「事務所への勝手な立ち入りには厳しく対処する」と警告している。さらに、「使用禁止の事務所へ入った場合は、『建造物侵入罪』が適用される。使用差し止めの事務所には立ち入りを禁ずることを示す封印が貼りつけてあり、立ち入るには封印を破ることになるため、こうした行為も『封印等破棄罪』の適用となり刑事罰の対象だ」とも強調する。

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写真はイメージ ©iStock

 ところが、事務所の閉鎖で暴力団側の活動を制限することによる弊害もあるという。前出の警察当局の幹部は、「山健組の事務所の使用禁止はシンボリックなことで影響は大きいだろう。ただ、追い込みすぎると定例の会合などをどこで開くか警察として把握できなくなる恐れがある。組織の実態が分かりづらくなることも考えられる」とも吐露した。警察と暴力団の暗闘は今後も続く。(文中敬称略、一部の肩書は当時)

山口組分裂の真相

尾島 正洋

文藝春秋

2022年5月25日 発売

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