ついに東京高裁が認定した“事故の真相”とは
事故後、道路には反射材などが設置されたが、事故当時は外側線すらなかった。
「客観的に見て、男性が事故現場を崖だと判断できたとは考えられない。こういったことを改めて丁寧に訴えると、東京高等裁判所は『自殺ではなく過失だ』と判断を覆しました。
地裁では私の主張についてボロクソに否定されていましたが、高裁ではそのすべてがひっくり返っていました。タイヤ痕の要因についても、1審では加速でついたとされていたのが、2審ではブレーキをかけたことでついたと判断されました」
男性は直線道路が続いていると思ったが、そこには急勾配のカーブがあった。直前で気づいてブレーキを踏んだが、間に合わず不幸にも転落して亡くなった。
これが東京高裁が認定した「事故の真相」だった。
「保険会社はここまでやるのか」
「裁判の結果を受け、保険会社は約1億円の保険金を支払いました。亡くなった方は有名大学を卒業したエリートでまだ30歳。奥さんも30代で、子供もまだ幼かったことから、算定額が高額になりました。
それに奥さんと子供の気持ちを考えると、本当に勝てて良かったと思います。自殺だと家族はその事実をずっと背負っていかなければならない。それが晴れたということが、一番嬉しかったです。ご家族にも感謝していただき、この仕事をやっていて良かったと一番思えたケースでした。
この件で、多額の保険金を支払いたくない保険会社はここまでやるのかと改めて驚きました(笑)。もちろん会社によりますが……」
熊谷氏は数々の民事訴訟で勝訴し、依頼者は後を絶たない。しかも、熊谷氏は“ある偉業”を達成したことがある。起訴されれば99.9%有罪判決が出るとされる刑事事件で無罪を勝ち取ったのだ。もちろん相手は、古巣の警察組織だ。
「精神的にも負担は大きいのであまりやりたくないのですが……」
熊谷氏はそう苦笑し、警察組織との熾烈な“法廷バトル”の裏側を明かしたのだ――。
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