スポーツアナウンサーになった1987年からずっとロッテを応援し続けていますが、ここ3年くらいは安田尚憲選手に注目しています。履正社高校時代の豪快なスイングが目に焼き付いているのと同時に、時折見せる笑顔が純粋な子供のように愛らしいんですよ……って、還暦のオヤジがこんなことを書くとキモいだけですね(汗)。今回は、その安田選手の話。
「2割でいいから40本というところを目指すべき」
98打数30安打4本塁打16打点、打率.306。
これは安田選手の8月から9月8日までの30試合の成績です。7月末までの成績が打率.243、2本塁打だったのにもかかわらず、9月8日現在のトータル成績は打率.263、6本塁打ですから、苦しみながらも必死に状態を上げてきた様が窺えます。
特にホームランに関して言えば、6月1日に神宮球場の対ヤクルト交流戦で2本打っただけで、同一リーグでは8月19日に楽天生命パークで岸投手から打ったのが今季第1号。本拠地ZOZOマリンに至っては、8月27日の楽天戦で田中将大投手から打ったのが初めての一発ですから、ファンは歯がゆい思いをしていました。もちろん、今をときめく「村神様」ことヤクルトの村上宗隆選手、日ハムの清宮幸太郎選手と並ぶ高卒の長距離砲三羽ガラスとして期待されていた安田選手本人にとっても、実に不本意だったでしょう。
先日、この3人がドラフトにかかった2017年当時、在京球団のスカウト部長でいらした方にお話を伺いました。
「正直に言えば3人の中で一番評価が高かったのは村上です。キャッチャーをやっていたということ、それから足が速いという2点。ボールを飛ばすということに関しては3人とも同じ評価でしたが、バッティングの中身は三者三様。清宮のバッティングはスイング自体が柔らかい。実は力でボールを飛ばすというよりはアベレージヒッターのスイングだと思います。村上は硬さと柔らかさを両方兼ね備えているから長打も出るし、アベレージも残る。対して安田選手は硬いスイング。硬いというと聞こえが悪いかもしれませんが、別の言い方をすれば破壊力があり、ボールを飛ばせるスイングです。彼は20本で3割ではなく、2割でいいから40本というところを目指すべきじゃないですかね」
非常に端的な説明でした。
時にチームバッティングも必要だった2年間
そこで安田選手の成績を見ると、本塁打は入団1年目の2018年が1本、19年は1軍出場なし、20年以降は6本、8本、6本……。これは、ある意味まだ開花していないということで、仕方のない数字だと思いますが、気になるのは三振の数。
この3年間の三振率(三振の数÷打席数)を調べると、2020年が.230、21年が.205、今年が.196(9月8日現在)と、だんだん減ってきているのです。ちなみにルーキーイヤーの18年は60打席で20三振、三振率は.333でした。三振が減るのは悪いことではありませんが、別の見方をすれば、結果を求めてバッティングが小さくなってきているんじゃないかと……。
村上選手がブレイクしたのは2年目の19年。143試合フル出場で36本塁打をマークしたものの、打率は.231。三振は実に184個で、その年のセ・リーグワースト記録でした。ちなみに三振率は.310。
当時、ヤクルトの小川監督は、シーズンの後半にこんなことを仰っていました。
「村上がチヤホヤされているけれど、いまウチは順位争いをしていないから、(この年、ヤクルトは最下位)ずっと打たせ続けている。上位を争っている状況なら、この打率でこんなに三振ばかりするのでは左投手の時には代打を使うだろうし、リードしている後半は守備固めも使いますよ。変な言い方だけど、彼にとって今のチーム状況はラッキーなんです」
比べて千葉ロッテは、この2年続けて2位と大健闘してきました。「自分の目指すバッティングを!」と思いながらも、勝利を優先に考えれば時にチームバッティングも必要だった……というのがこの2年間の安田選手ではなかったでしょうか。