「廣岡精肉店のコロッケおいしかったよねぇ。あれまた食べたいなぁ」

 テレビのグルメ番組を見ていた妻の口から、そんなリクエストが飛び出した。廣岡精肉店とは、大阪市阿倍野区昭和町にて巨人・廣岡大志選手のご実家が営んでいるお肉屋さん。「ヤクルトファンの聖地は味も抜群」との評判を聞きつけ、巨人に移籍して間もなかった昨年4月に妻と訪れたことがあった。高評価で知られる1個70円のコロッケをその場で揚げてもらい、ハフハフ言いながら食べた熱々のコロッケはたちまち自分史上1位に躍り出た。

廣岡大志

「味付けがしっかりしてておいしかったよなぁ。おれもまた食べたくなってきた」

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「コロッケと一緒に買ったハンバーグとミンチカツ、しゃぶしゃぶ用の牛肉もおいしかったよね。今日の晩ご飯用も含めて、廣岡精肉店でいろいろ買ってきてよ」

 おつかい内容が記された紙をポケットに入れ、最寄り駅である阪神甲子園駅へ。梅田で地下鉄御堂筋線に乗り換え、昭和町駅で下車し、数分歩くと文の里商店街内に位置する廣岡精肉店が現れた。

廣岡精肉店 ©服部健太郎

今でもヤクルトファンが来てくれる

 背番号32が入った巨人ビジターユニフォームや廣岡大志の名前入りタオル、昨年4月に決勝本塁打を放ったシーンのパネルなどが飾られている店は、廣岡大志愛に満ち溢れている。

 昨年4月に訪れた際は「東京読売巨人軍ならびにジャイアンツファンの皆様、32番を宜しくお願いします」「東京ヤクルトスワローズ、そしてヤクルトファンの皆様、5年間ありがとうございました」と記されたメッセージが壁に貼られていた。

 廣岡精肉店の店長を務める松尾義則さんは「巨人移籍を機に来てくださるようになった巨人ファンの方もいっぱいいらっしゃいます。そしてヤクルトファンの皆様も以前と変わらず来てくださります」とうれしそうに語った。

「甲子園での観戦の前に立ち寄って、コロッケなどを買っていく方が多いですね。今でも来てくださるヤクルトファンの皆様には感謝しかないです」

 18歳の時から廣岡精肉店で勤務している松尾店長は現在68歳。廣岡大志の祖父が1964年に創業した精肉店の歴史の大部分を知る。「ここで働き始めた時、大志のお父さんは小6。大志のことは赤ん坊の頃からよく知ってます。どんな子だったかって? 端的に言うと悪ガキ。いたずらばっかりしてたので、1週間に1回は母親がどこかに謝りにいってました」と苦笑いしながら教えてくれた。

松尾義則さん ©服部健太郎

「大志のおばあちゃんは熱烈な阪神ファンなのですが、お父さんが巨人ファンで。その影響を受けて大志も子どもの頃から巨人ファンでした。よくお父さんと甲子園に阪神対巨人戦や高校野球を見に行ってましたね」

 2015年秋のドラフトでヤクルトの2位指名を受けた際は、「昭和町からプロ野球選手が出た!」と商店街は大いに盛り上がったという。

「阪神ファンばかりの町なのに盛り上がりましたね。4位あたりだろうと予想していたのにまさかの2位。本人が一番びっくりしていました」

 注文し、店内で揚げてもらっていたコロッケとミンチカツが揚がった。お昼休憩の時間を迎えた松尾店長の厚意で話の続きを2階の事務所で聞けることになった。