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散髪でヒーローインタビューを断る選手がいまだかつていただろうか…

 それから最近、最も刺さった嘉弥真エピソードがある。

 8月21日、日本ハムファイターズとの一戦でのことだった。

 2アウト一、二塁という例のごとくランナーのいる場面で登板した嘉弥真投手は、たった4球で打者を空振り三振に打ち取り、今日もお仕事完了!といったいつもと変わらぬ表情で(私の目にそう見えただけ)マウンドを去った。

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  その日のお立ち台は、先発をつとめた和田投手。

 ヒーロー候補に嘉弥真投手の名前も挙がったそうなのだが、お立ち台をキャンセル(自身のお立ち台でチームメイトの名前を出してくださる和田投手のお人柄の良さ!)。

 理由は、試合後『髪を切りにいくので時間がない』からということだった。

 なんてことだ!

 延長戦になっていたらどうするつもりだったのだろう。

 ブルペンの電話から小声で『すみません。試合がまだ続いているので、今日はキャンセルでお願いします!』と美容室にことわりを入れたのだろうか。しかしブルペンの電話は、内線オンリーのはずだ。

 間違えてベンチに電話してしまったら大変だ(関係無いが、予約は某ホットペッパービューティーだろうか)。

 もしかすると髪を切り損ねた長髪の嘉弥真投手が見られたかもしれない。

 そもそも、散髪でヒーローインタビューを断る選手がいまだかつていただろうか……。

 そういえば散髪といえば、何年か前に球団オフィシャルリポーターの加藤和子さんから『お子さんの髪の毛を自ら切ってやっていた』という話もお聞きしたことがある。写真を見たところ、前髪がまっすぐ……直線だったらしい。マウンドでは職人ばりのスライダーで打者をねじ伏せているが、私生活ではストレートで勝負しているようだ。

 ……話がそれてしまった(大暴投)。

 こんな風に、ひとつのエピソードから延々と妄想が広がってしまう。試合中の寡黙な仕事人の姿とのギャップがまた魅力だ。

 ついついおもしろおかしく書いてしまったが、嘉弥真投手はサイドスローに転向してこの5年、毎回いつ訪れるか分からない登板機会のわずか数球、しかし試合を左右する大きな数球、のために想像も出来ないような集中力を使い、ブルペンでコンディションを整えている。

 ご本人もたとえ試合では数球のピッチングでも「裏では人の倍は肩を作っている」と話すように、準備を怠らない。身体に疲れがたまらないよう調整のしかたもうまくやれるようになってきたという。ブルペンで投げすぎてしまう後輩にはアドバイスをしたりもする。その背中を見て後輩達も学んでいることが沢山あるだろう。

 かつてホークスに在籍し『左の中継ぎ』として存在感を放った森福允彦氏の姿を近くで見ながら、強い覚悟と決意を持ってその後を継ぎ、静かに結果を出し続ける嘉弥真投手。これからも知らない間にハッとするような進化をみせてくれるにちがいない。

 今季日本一になり、メディアのインタビューで、ヒーローとしてお茶の間をほっこりと幸せにしてくれるのを楽しみにしている。

 その時はまたこのコラムをみてくださいね! じゃんけん……ぽん! うふふふふ

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