2人目の子作りには躊躇していたが…
――実際に子作りで大変だったことは?
まさき 最初は、採取した精子を自分たちの手で注射して膣の中に入れるセルフ人工授精の「シリンジ法」でチャレンジしていました。月一度しかない排卵日に合わせて兄の精子をもらいに行かなくちゃいけないので、スケジュールを調整するのが大変でしたね。
最終的には1人目は人工授精、2人目は顕微授精で授かりましたが、妊活の期間はトータルで4年ほど。パートナーと兄は本当に大変だったと思います。
ただ、僕は2人目の子作りに躊躇していたんですけど、そのときにはパートナーと兄でサクサク話を進めていて(笑)。兄は長男がかわいくてしょうがなかったようで、2人目はすんなりOKをしてくれたみたいです。僕の知らない間に(笑)。
――新しい家族のかたちですね。
まさき ふだんは意識しないんですけど、子どもを病院に連れて行ったとき、「ご両親にアレルギーはありますか?」と聞かれたりするとハッとしますよね。僕の精子でできた子じゃないから、本当なら兄の既往歴もちゃんと確認しておく必要がありました。
そのあたりを子作りのときにはスルーしてしまっていたので、僕たちのようなかたちで家族を持とうとしている子にはアドバイスをするようにしています。
子どもには「変身して男の子になった」と話している
――先ほどまさきさんは2人目の子作りを躊躇していたというお話がありましたが。
まさき 僕が生んだわけではないから産後鬱ではないですけど、1人目が生まれた後は本当に大変で……。お店の開店と重なったのもありますが、気持ちの余裕がまったくありませんでした。毎日一生懸命で、とにかく必死。お金も時間もかけて苦労して作った子どもたちだったこともあり、僕は上手に子育てできるだろうと思っていたんです。だけど、今は5歳と2歳の子どもたちを怒ってばっかり。日々悪戦苦闘しながら子育てしています。
――お子さんにカミングアウトはしていますか。
まさき 長男には3歳のときに、「まさきは昔、女の子だったけど変身して男の子になったんだ」と話しています。この前、子どもたちと遊んでいるときに股の部分を蹴られたので痛がるそぶりを見せたら、「まさきは急所がなくてよかったね。チンチンとタマがあったらヤバかったよ」と言われました(笑)。
そういえば、「じゃあママも変身したの?」と聞かれたこともあります。「ママは変身してないよ。変身する人もいるし、しない人もいるんだよ」と説明しましたが、ふーんという感じの反応でしたね。子どもたちは「変身はわりとフツーに起こること」と思っているかもしれません。
写真=山元茂樹/文藝春秋
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