女性としての性を割り当てられて生まれたが、現在は男性として生きる、石川まさきさん(38)。女性のパートナーと結婚し、その後、実兄から精子提供を受けて子どもをもうけ、今や2児の父に。さまざまなセクシュアリティの人たちが集うバーのオーナーとしても活躍しています。

 今回は、実兄に「精子をください」とお願いすることからはじまったFTM(※)の子作りについて聞きました。(全3回の3回目/最初から読む

※「Female to Male」の略。女性の体で生まれてきたが、男性として生きることを望む人のこと。

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――「結婚して家庭をもつのが夢だった」とおっしゃっていましたが、まさきさんが法律婚にこだわった理由は?

石川まさき(以下、まさき) パートナーに何かあったとき、婚姻関係がないと手術の同意や面会ができないとかがすごく嫌で。紙きれ一枚とは言いますけど、僕は絶対必要だと思っていたんです。

――何かあったときのために、関係性を証明するものとして法律婚を望まれていたと。

まさき あとは、幼少期に家族がバラバラだったこともあって、理想の家族像みたいなのが強くありました。自分だけの味方になってくれる場所がほしい、そんな気持ちも強かったです。

結婚式の様子(本人提供)

「元女で、今は男になってる僕ってちょうどよくない?」

――結婚されたパートナーの方へはいつの段階でカミングアウトを?

まさき 出会った瞬間にしています。ナンパじゃないですけど、僕が彼女に一目惚れして、もっと一緒にいたいと思ったんです。でも当時、彼女は女性のパートナーを探していたんですよ。

――だとすると、すでに男性になっているまさきさんは恋愛対象じゃなかったわけですね。

まさき 彼女は長年付き合っていた彼氏と別れた直後で、前から興味があったレズビアンバーに勇気を出してはじめて訪れたのですが、そのタイミングで出会ったんです。僕はそのときたまたま、そのお店を借りてイベントを開催していました。

 結局、彼女はレズビアンバーに何度か行ってみたものの、どうも馴染めなかったみたいで。「自分には女同士は無理なのかな」と言っていたのでチャンスとばかりに、「だったら元女で、今は男になってる僕ってめちゃくちゃちょうどよくない?」と押しまくって交際が始まった感じです(笑)。