背筋力が強いひともいれば、足腰の柔軟性に優れているひとがいるなど、ひとそれぞれ差はあるわけですが、それこそ個性です。それぞれの個性を生かして社会の中に役割や居場所を見つければいいわけです。
21世紀型スキルだとか、キー・コンピテンシーだとか、社会情動的スキルみたいな新しい言葉を次々生み出して、それを身につけておかないとこれからの世の中は生きていけないかのように過度に不安を煽る教育論には振り回されないでほしいと思います。
これ、VUCA時代の親に必要なリテラシーの1つめです。
いまある教育を全否定しない
ちなみに、21世紀型スキルの総まとめ的な存在として有名なのが、OECDの「Education2030」プロジェクトです。2018年には「学びの枠組み」を発表しています。そこに示されていた概念図を見ると、21世紀型スキルの全体像がわかるのではないかと思います。
ややこしい話はすべて割愛しますが、そこに添えられている「コンストラクト」のリストが、これからの子どもたちが身につけるべきコンピテンシーの構成要素です(これだってだいぶ抽象的ですが)(図1)。
学校のカリキュラムの下敷きとしては、このような概念もときに必要なのでしょうが、親の立場でこれらを一つ一つ意識的に養っていくなんて無理ゲー(クリアできないミッションを課されたゲーム)だということは、誰でも直感的にわかると思います。
でも、くり返しますが、大丈夫。子どもたちにはもともとこういうものが備わっています。それだけではありません。子どもたちには、自分がもともともっているこれらの要素を自ら大きくしていく自己トレーニングプログラムのようなものまで埋め込まれています。
それが特に幼児期には「遊び」という形で発現します。遊んでいるように見えて、学んでいるのです。遊びには、指先の巧緻性を鍛える遊びから、人間関係を学ぶ集団遊びまでいろいろあります。
ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマン博士は、幼児教育の投資効果の大きさを訴えましたが、彼が検証した社会実験で行われた幼児教育の実態も、早期詰め込み教育のようなものではありません。子どもたちの自発的な遊びを重視したものでした。