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 経済学者たちが「認知能力」といえば、「研究者たちが認知できる能力」という意味になります。

 要するに学力よりも大切なものがあるという、ある意味当たり前のことを言っているだけです。

「非認知能力」って、結局…

 ここで学者ではない無責任な立場を利用して、私なりに大胆に「非認知能力」を定義させてもらうならば、「これからの時代をたくましく生きていくうえで子どもたちが身につけるべきだと大人たちが思い込んでいる、存在するのかどうだかすら怪しい曖昧な力すべて」となります。

 ヘックマン博士らは心理学者ではありませんから、非認知能力の正体が何かという問いには迫ってはいません。しかし著書『幼児教育の経済学』(東洋経済新報社)では「意欲や、長期的計画を実行する能力、他人との協働に必要な社会的・感情的制御といった、非認知能力」と述べています。

 「意欲や、長期的計画を実行する能力」の部分はどちらかといえば個人に属する能力ですよね。おそらくそこでイメージされている能力と重なる概念を表す言葉に「やり抜く力」があります。

 これも一時期世界中でブームになりました。英語では「GRIT」といいます。アメリカの心理学者アンジェラ・ダックワース博士が提唱する概念で、社会で“成功”を収めるには、学力よりもやり抜く力が重要だというのです。

 ちょっとテストの点がいいひとよりも、自分で決めたことを最後までやり抜く力が強いひとのほうが多くを成し遂げるであろうことは、誰でも容易に想像がつくはずです。

 一方で、やり抜く力の強さが社会的・経済的な優位性を予測することはあっても、人生の幸せのようなものには関係しないという指摘もあります。それもなんとなくわかりますよね。

 注目すべきは、やり抜く力の鉄人に共通するのが「たったひとつのコンパス」をもっていることだとダックワース博士が強調していることです。

 やり抜く力が強いひとは、何にでも挑戦してやり遂げるのではなくて、自分にとっての究極的な関心事があり、それをぶらさないというのです。いわゆる「自分軸」がしっかりしていて、関心のないことにはエネルギーを割かないのです。

「レジリエンス」もよく聞く言葉だけど…

 ついでなので、やり抜く力に似た概念として「レジリエンス」という言葉にも触れておきましょう。Education2030のコンストラクトにも出てきます。直訳すれば「復元力」みたいな概念です。絶対に意志を曲げない頑なな強さではなく、強い力が加えられたときには一旦しなりながらも元に戻る柔軟性を含む粘り強さのことです。