もしあの補強がなかったら今頃……
プロ野球ファンはストーブリーグに夢を見て、ペナントレースで現実を知る。
巨人ファンは昨季、13連敗の厳しい現実に直面した。だから、正月くらい明るく2018年はチーム再建元年と祝っていたい。正直、賛否の分かれたゲレーロと野上亮磨の補強だが、冷静に振り返ってもしも両者の補強に失敗していたら……と考えるとゾッとする。考えてみてほしい。「11年ぶりのBクラスで初めてCS出場を逃し、ドラフトではあっさり清宮君を外し、村田さんやマイコラスは退団しました」という切羽詰まった状況で、ハイ補強もしくじりましたじゃ悲惨すぎて話にならない。まるで「忘年会で財布を失くし、スマホをドブに落とし、クリスマス2日前に彼女に振られました」みたいな状況のまま年を越すハードさだ。新年も死ぬほど暗い雰囲気になっていたと思う。もちろん彼らが花の都大東京で活躍できるかはまだ分からない。もしかしたら西武に人的補償で移籍した高木勇人が新天地で復活するかもしれない。けど、今は能天気にゲレーロ40本塁打と野上二桁勝利を信じよう。だって、めでたい年明けだから。
2018年の巨人先発陣は沢村賞投手の菅野智之、左のエース田口麗斗、2年目右腕の畠世周、昨季パ・リーグで11勝を挙げた野上。そして、色々あって結果的に1年間ほとんど休んだ形になった山口俊は秋にジャイアンツ球場でエグいボールを投げ込んでいた。マイコラスは抜けたものの、彼ら5人をベースにした先発ローテはリーグ上位クラスだと思う。そしてオフのスポーツ報知でよく見たのが、若手投手陣の「菅野さんに色々教わりたい」というコメントだ。全盛期を迎えつつある背番号19は早いもので28歳。今季プロ6年目、気が付けば完全にチームの大黒柱である。
巨人に代々伝わる『28歳最強説』
「女が最高値で売れるのは27。私の統計では27歳が売り時のピークなの。それを越えたら値崩れを起こすわ」
十数年前、フジテレビで放送された月9ドラマ『やまとなでしこ』で松嶋菜々子演ずる桜子さんの有名な台詞である。現代なら軽く炎上しそうなコメントだが、このドラマは平均視聴率26.4%、最高視聴率は34.2%という記録を叩き出している。なんでもないようなことが幸せだった、あの頃の月9ドラマ全盛期と巨人ナイター中継黄金期。そう言えば、自分も昨季のシーズン中にとあるコラムで「28歳最強説」を書いた。
あの松井秀喜が50本塁打を放ったのが28歳のシーズン。坂本勇人がセ遊撃手初の首位打者に輝いたのは同じくプロ10年目。阿部慎之助が球団捕手初の30発・100打点をクリアしたのも28歳の2007年。斎藤雅樹以来の3試合連続完封を記録したエース菅野も28歳になる……という内容だ。ちなみに原辰徳もキャリアハイの本塁打数は28歳の86年シーズンだった。野球選手にとって28歳は肉体面と経験値が高いレベルで合致して一種のピークを迎えるのだろう。振り返ると、歴代の巨人ではいつの時代も20代後半の主軸がど真ん中にいたわけだ。