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巨人軍伝統の「28歳最強説」は誰に継承されるのか?

文春野球コラム 2017 to 2018

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由伸監督に託された最大の仕事とは?

高橋由伸監督 ©文藝春秋

 その伝統の流れが、ちょっとヤバイ状況にある。特に野手陣はキャプテン坂本が今年30歳を迎えるリアル。じゃあ坂本の次は誰を中心に……っていうのがまったく見えてこない。公開中の映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』でハン・ソロやルーク・スカイウォーカーに代わる主役の継承がいまいち上手くいっていないと話題になっているが、何事もスムーズな世代交代は難しい。

 数年前、ジャイアンツ球場を湧かせていた大田泰示、中井大介、藤村大介、橋本到、立岡宗一郎らの世代だが、大田はすでに日本ハムでリスタートを切ってるし、89年生まれの中井はもはや若手ではないし、藤村は現役引退、若いと思っていた橋本や立岡ですら今年28歳になる。もちろん14年ドラ1の岡本和真、16年ドラ1吉川尚輝には期待してる。彼らの出場機会を作る為にベテラン村田さんを放出までしたのだから、何がなんでもレギュラーを掴んでほしい。しかしその一方で誤解を恐れず書けば、岡本や吉川というのは、選手のスケールやスター性やチーム内の立ち位置的に言ったら一昔前の駒田徳広や岡崎郁、もしくは清水隆行や仁志敏久ではないだろうか? どちらかというと主役がいてこそ生きる実力派脇役タイプ。だが、スポーツ新聞やスポーツ番組の報じ方を見ていると、まるで岡本や吉川に未来の松井秀喜や原辰徳のようなチームのど真ん中を託す的な論調が目立つ。もちろんファンだったらそれで全然いい。だが、大手メディアがそういう論調で煽るのはちょっと違和感がある。

 映画でもプロ野球チームでも主役と脇役が適材適所で配置され、ひとつの形になる。だが、今の巨人若手野手陣には主演を張れるような選手がいない。いわゆるひとつの力不足。勘違いしないで欲しいが、選手たちに罪はない。大きな要因はドラフト会議にある。月刊ジャイアンツの松井特集にさりげなく書かれていたが、巨人が「3球団以上競合した1位指名」で当てたのは80年原辰徳と92年松井秀喜の2回のみ。なんと現在10連敗中らしい。つまり、逆指名を除くと目玉大物選手はこの25年間ひたすら抽選で外しまくり、だったらと独自路線に走り微妙な結果に終わる。その悪循環が現在のチーム停滞に繋がっていると言えるだろう。

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 えっ結局クジ運? そう高橋由伸監督の悲劇は「高橋由伸のような若手」に出会えていないことである。由伸はルーキーイヤーにいきなり打率3割を放ち、24歳で迎えた2年目には打率.315、34本、98打点という凄まじい成績を残し、ペプシのテレビCMにまで出演している。もしも、こんな若きスーパースターが今の巨人にいたら雰囲気も一気に変わるだろう。ノスタルジーと笑われるかもしれないが、20代前半の松井や由伸がクリーンナップを打っていた頃は見ていて楽しかった。だって彼らに対して、誰も「育成」なんて言わなかったから。プロ野球の最大の魅力は、傑出した「才能」が「育成」のノウハウやロジカルを破壊する瞬間だと思う。

 いつの日か、そう遠くない未来に由伸自身の“背番号24”を継承させたくなるような天才をドラフトで引き当ててほしい。それが個人的な2018年の初夢である。

 さて、今年は初詣のおみくじで大吉引けるといいなぁ……。
 
 See you baseball freak……

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