文春オンライン

2022/10/12

これまでを知るみんなが祝福でひとつになった

 全てがうまくいったわけではなく、途中、暗い雲が立ち込めた時もあった。7月19日バファローズ戦で自打球が左膝を直撃。いったんは守備についたので、大丈夫かとほっとしかけたものの途中交代。結局、骨折だった。ファン投票で選ばれた初めてのオールスターが目の前だった。

 辞退、手術、リハビリ……ゲーム復帰まで約4週間と発表されていたのに、完治を待たずに8月16日に復帰。どんなに数字を残してもシーズン規定打席に到達できなければ首位打者はない。BIGBOSSは6~7割走れるならと試合に松本剛選手を出場させた。

 相手投手のタイプによってはスタメンを外し、スタメンで出ても打てばすぐに代打を出し、絶妙な匙加減で札幌ドームラストの試合で規定打席に到達。その試合に松本剛選手は7回に代打で出場、ショートゴロに倒れ、苦笑いでベンチに戻るも、BIGBOSSを始めとするチームメイトたちの祝福が溢れていた。あの日は満員だった。19年間本拠地だった札幌ドームでの最後の試合。ファンもマスコミも松本剛選手のこれまでを知るみんなが祝福でひとつになった。

 選手の活躍は運も大切だ。選手にとって指揮官が誰かというのも運のひとつ。タイミングも運のひとつ。彼は今まで数々のアドバイスを浴びてきた。そのどれもが無駄ではなく、彼の中に積み重なり、経験値の上がった11年目の松本剛選手だったから、今年の新庄監督の言葉は胸にストンと落ちたのではないか。

 そして、家族が出来た今の松本剛選手だったから作用するメンタルな部分もあったに違いない。全てのタイミングが合って、環境が整って、つかみ取った首位打者のタイトル。この誇らしい姿は今季の私たちのずっと心の拠り所だった。

 うまくいかないことだらけの日々で、松本剛選手の姿は光に包まれていた。松本剛選手の2022年は、これまでの苦労も全て込みでファンの永遠の宝物になる。最下位の拠り所、というクレジットと共に。

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