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最後まで立ちはだかり続けたソフトバンク

 その後、他球団でコーチや二軍監督を務め、指導者として更に経験を積まれて2017年に埼玉西武ライオンズに監督として帰ってきた。

 当時、低迷していたライオンズは“常勝ライオンズ”の中心選手だった辻さんに対し、あの頃のようにもう一度強いライオンズを再建してほしいという期待をかけ、かなりの重圧があったのではないかと思う。

 そんな中、監督1年目から若手の山川穂高、外崎修汰、ルーキーの源田壮亮を起用して4年ぶりのAクラスで2位とチームを立て直した。そして2年目の2018年は開幕から1年間首位を独走し、10年ぶりにパ・リーグを制覇している。

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 しかしCSでソフトバンクに敗れ、最終戦のセレモニーのスピーチでは悔しさを抑えきれずに号泣した。あんな辻さんを見たのは初めてで、ライオンズファンのみなさんの中にも胸が熱くなった方が多かったのではないだろうか。

 2019年はその悔しさをバネに、開幕から投手陣の不調もあり首位が遠かったが、前年の借りを返すために我慢した戦いで上位チームを追いかけ続け、ついに最大8.5ゲーム差あったソフトバンクとのゲーム差を逆転してリーグ2連覇を達成した。

 が、しかし、またしてもCSでソフトバンクに全敗という結果に。

 そして今年、昨年の最下位という悔しさを晴らすためチーム一丸となって挑んだが、またしても最後にソフトバンクにCSで敗退した。

辻発彦から松井稼頭央に託されたもの

 辻さんが監督に就任してから、何度も目の前に立ちはだかった鷹の壁。

 CSの通算成績は2勝12敗。

 今振り返ると、これだけ同じ相手に最後の最後に何度も敗れてきたライオンズは、無意識にすり込まれた苦手意識と戦っているようにも思える。

 レギュラーシーズンにも、この試合がポイントになるというゲームがいくつかある。CS、日本シリーズという短期決戦の大事な試合では必ず、チームに勢いをもたらすようなプレーが必要になってくる。

 そのカギは、辻さんも会見で言っていたが投手力を中心に守り勝つ野球。これがベースとしてないと、常勝軍団になることはできない。

「野球はやっぱり投手。まず守りがあっての強いチームづくり。優勝した年は強力打線と言われたけど、打ち勝つのは難しい。今年みたいに打てなかったら、投手が頑張ってくれてAクラスになった。これからも投手とディフェンス力があれば戦える。さっき(試合後)、選手の前でも話しました」

 その言葉通り、今シーズンは真のエースに成長した高橋光成を中心に投手陣が奮闘し、リーグトップのチーム防御率2.75で投手王国を構築した。

「打撃は水もの」といわれるように、プロのピッチャーから毎回何点も得点を奪うのは難しい。80年代、90年代のライオンズ黄金期も秋山、清原、デストラーデの「AKD砲」など攻撃陣のイメージが強いが、渡辺久信さん、工藤公康さん、郭泰源さん、潮崎哲也さんなど錚々たる投手陣がいた。

 そしてもう一つの武器は、チームに勢いを生む機動力。辻さんが87年の日本シリーズで見せたように、相手の隙をついてダメージを与えられるのが走塁だ。

 僕自身の経験からも、好走塁はチームの士気をグッと高める。短期決戦では特に大事な要素になってくるだろう。

 逆にいうと「自分たちは絶対に隙を見せない」という野球ができれば、今のライオンズの戦力を考えると十分にリーグ制覇、日本一が見えてくる。

 今季ヘッドコーチを務めた松井稼頭央さんが来季は新監督に就任する。辻さんが6年間でライオンズに残してくれたものを松井さんが継承し、強いライオンズを経験された者同士が監督のバトンをつなぎ、必ず常勝ライオンズを作ってくれると僕は信じている。

辻監督と松井コーチ ©時事通信社

 最後に記者会見で辻さんは今後のことを聞かれて、こう答えた。

「全く考えていない。ドキドキしながら采配することはないけど、ドキドキすることを見つけないといけない」

 確かにプロ野球ほどの緊張感や解放感を味わうことは、なかなか難しいと思う。とりあえず一緒にバンジージャンプでもやりましょうか!?(笑)

 劇団獅子として盛り上げてきた「辻監督と愉快な仲間たち」がもう見れなくなると寂しい気持ちでいっぱいですが、これも継承してもらいましょう!

 辻さん、本当に6年間お疲れさまでした。ゆっくり休んでください。

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