今やパ連覇監督の中嶋聡、オリックスでも「納得させる」采配
豪州メルボルン出身のマイケルは、米国の大学に進みさらにプロ入り。数年のマイナーリーグ生活の後、メジャーに昇格するまでになった。ところが当時所属していたツインズでは、常にストレスを抱えながらのマウンドだったという。
「僕が変化球で打者を打ち取りたいのを、誰も分かってくれなかったんだ」
マイナーから上がってきた背番号の大きな投手の出番と言えば、まずは敗戦処理がほとんど。メジャーで組んだ捕手は皆、ストレートばかりを投げさせようとしたのだという。そうしているうちに持ち味を発揮することなく打ち込まれ、マイナーに戻るのがお決まりのパターンだった。
日本ハムでも最初、1軍で打ち込まれることが続いた。同じように、ここでも成功できないのかと思ったが「ファイターズは待ってくれたんだ」と、恩義を感じている。さらに2年目となる2006年の開幕直後から、中嶋が異例の“抑え捕手”に定着。マイケルに気持ちよく得意の変化球を投げさせ、セーブを稼がせていった。マイケルを“納得”させ、熱すぎるハートを、前向きに作用するベクトルに変えたのだ。
時は流れて2022年。監督となった中嶋は、暗黒期と呼べるほどの低迷が続いた古巣オリックスをパ・リーグ連覇にまで導いた。そこでも「納得させる」ことは、大きな意味を持っていた気がする。遊撃の名手・安達了一を二塁にコンバートし、二塁の定位置を手中にしかけていた福田周平を外野にもって行った。内外野を行ったり来たりで、安定した結果を出せなかった宗佑磨は三塁でリーグ有数の名手と評されるまでになった。みな結果を残しているのは“異動”にも納得しているからだろう。今季も、志願して捕手に戻っていた頓宮裕真を終盤戦で一塁にコンバート。見事に杉本裕太郎が抜けていた打線の穴を埋めた。
名監督の操縦術に、激情ほとばしるマイケルと組んでいた経験が生きているといっては、言い過ぎだろうか。本物のファイターズが、最下位脱出へ牙を研ぐこの秋、再びの日本シリーズを夢見ながら、パ・リーグの代表を応援したい。
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