7月10日の参院選で1議席を獲得し、国政政党となった「参政党」。「安倍晋三元首相殺害事件の真相」「ワクチンの繰り返し接種は死の階段をあがること」といった陰謀論が飛び交う政党に、10万人もの党員が熱狂するのはなぜか。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で開高健ノンフィクション賞を受賞したジャーナリストの畠山理仁氏が見た、“参政党現象の正体”を『週刊文春WOMAN2022秋号』より、一部編集の上、掲載します。
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予祝パーティーの列に並ぶ「上品な橙色の集団」
参議院議員選挙から1カ月が過ぎた8月21日午前10時すぎ。幕張メッセの最寄り駅であるJR海浜幕張駅は、2つの大型イベントを目指す人たちで混雑していた。
一つは3年ぶりに開催される音楽フェス「サマーソニック2022(サマソニ)」。もう一つは参政党の政治資金パーティー「国政政党誕生予祝パーティー」である。
サマソニを目指す人たちは、おヘソを出した女性やタトゥーが入った外国人など派手な若者が目立つ。肌の露出度は高いが、ほとんどの人がマスクをしていた。
一方、参政党の予祝パーティーに向かう人たちの年齢層は30~50代が中心だ。開場前に予祝パーティーの列に並んだのは約500人。男女比はほぼ半々で、ジャケット姿の男性もいれば、女性の3人組や中高年夫婦、小学生を連れた家族もいた。
背中に「投票したい政党がないから、自分たちでゼロからつくる。」と書かれた橙色の「参政党応援Tシャツ」を着た人もいる。党員の4割が女性というだけあって、大黒天のような帽子、チュニック、カーディガン、ブラウスなどに党のイメージカラーである橙色を取り入れておしゃれをしている人も多い。
整然と列に並ぶ人たちの服装は上品で物腰は柔らかい。列に割り込む人もいない。コロナ禍でなければ「上品な橙色の集団」と映るだろうが、ほとんどの人がマスクをしていなかった。
参加者は会場、オンライン合わせて約7000人
12時半に君が代斉唱から始まった予祝パーティーは、和太鼓あり、篠笛あり、三味線あり。講師の話が長時間続き、最後は党のテーマソング「おはよう」を歌うロックバンド「ザ・マスミサイル」の音楽ライブで盛り上がった。すべてが終了したのは午後8時だ。