連絡が取れなくなったのが事件の起きる3日前のことだ。それから2日後、殺人事件前日の10月28日午前、高橋被告は驚きの行動に出る。
「Aさんのマンションに行き、鍵業者を呼んで合鍵を作ってもらい侵入したのです。部屋に入った高橋被告はベランダに置かれていたアウトドア用のモーラナイフを室内に持ち込んでいます。このナイフは刃体が10センチ以上あり、刃の厚みもありました。薪を割ったりもできるような鋭利なナイフです」(同前)
日付が変わった29日未明。友人らと飲酒して帰宅したAさんは、高橋被告と予想外の対面をすることになる。そこでも2人は口論となり、高橋被告は「関係を修復することはできない」ことを悟るとAさんの殺害を決意した。
鋭利なナイフで刺されたAさんに反撃した形跡はなかった
そして、Aさんの胸などを複数回にわたり、モーラナイフで刺したのだった。深い傷は約7センチもあり肺にまで達していた。さらに、まだ息のあったAさんを数分間にわたりネクタイで首を絞めて窒息死させている。判決文によると、Aさんは刺された際の防御創こそあったものの、首絞めに抵抗した形跡はなかったという。
高橋被告はナイフで襲いかかったシーンをこう証言している。
「最初にナイフが刺さった感触があったのは向かい合ったAさんに対してナイフを突き出したときであり、体もAさんにぶつけたかもしれない。刺した部位は体の左側。その他の傷は、もみ合いの中でナイフを振り回してできた傷だと思うが、そのタイミング等は分からない。また被害者に奪われたナイフを奪い返そうとして被害者が倒れたときに、ナイフが胸に刺さった」
そしてAさんの直接の死因となったネクタイを使用した首絞めについては次のように供述した。